モスバーガーの隠し味 テリヤキ、ライスはこう生まれた モスフードサービス(上)
「モスバーガー」のミートソースが熱々の理由
今も看板商品の「モスバーガー」はミートソースが味の決め手。手本となったトミーズではチリソースが使われていたが、日本向けにアレンジし、日本人の舌になじんでいるミートソースを選んだ。 前例のない味付けだけに100回以上の試作を重ねた。それまで料理の経験がなかった創業チームの3人が苦心の末、屋号を託せる、納得のミートソースに仕上げたという。 このミートソースはセ氏85度という熱さでパティ(肉)にかける。ソースの上からのせるのは、冷やしたトマト。あえて熱いソースと、温度の異なるトマトやパティ、オニオンなどを引き合わせることによって、それぞれの持ち味が引き立つ「温度のハーモニー」が生まれる。そのプロデューサー役が熱々のミートソースなのだ。
「テリヤキバーガー」のソース、決め手はみそ
第1号店を開いた翌1973年に生まれたヒット商品が「テリヤキバーガー」だ。今ではあちこちの外食店で「テリヤキ」を冠したメニューが登場しているが、ハンバーガーチェーンでの草分けはモスバーガーだ。当時は魚の照り焼き料理ぐらいしか知られていなかったので、立ち上がりは苦戦したという。 和食テイストを巧みに取り入れるモスバーガーらしいメニューは、オリジナルのテリヤキソースをパティにからめている。和食で使う照り焼きのたれはしょうゆ、みりん、砂糖を使うことが多いが、「テリヤキソースはしょうゆに味噌を隠し味的に加えている」(濱崎氏)。さらにココアパウダーや黒すりごまを加えて深みを出した。 「しょうゆや味噌の味は日本人の原体験。甘じょっぱい風味は和風の味付けに慣れた日本人に受け入れてもらいやすかった」と濱崎氏はロングセラーの理由を読み解く。 現在のテリヤキバーガーは、発売当初のレシピを単になぞっているわけではない。実はミートソースもテリヤキソースもバージョンアップを重ねてきた。中でもミートソースは10回以上見直してきた。 食材やソースを変える場合は具材ごとに少しずつ変えていく。一斉に変えると、評判に基づいて再検討するのが難しくなるからだ。野菜やバンズ(パン)、ソースなどのパーツごとに時間差を設けて、消費者の声に耳を傾けつつ、そろりと進化させていくのがモスバーガーの流儀だ。 具材の主役ともいえるパティにも日本人の舌への目配りを加えた。米国では牛肉のひき肉をそのまま円盤状に整えたパティが普通だが、桜田氏たちは日本人に親しまれているハンバーグをイメージ。国内でハンバーグの標準だった牛と豚の合いびき肉を使った。 1997年に牛肉100%のパティに変更したが、2008年に売り出した「とびきりハンバーグサンド」では再び合いびき肉を採用。商品名の通り、ハンバーグの味わいを押し出した。バンズからパティがはみ出す「とびきりハンバーグサンド」は大ヒットし、今ではプレミアムなハンバーガーの「顔」になっている。