巨大恐竜をどのようによみがえらせるのか? 研究者に聞いた「恐竜のつくり方」
長年にわたる労力と数億円にのぼる費用をかけた復元プロジェクトを追った、米ロサンゼルス郡立自然史博物館
2024年秋に米ロサンゼルス郡立自然史博物館(NHMLAC)で展示予定の「ナタリー」と呼ばれる全身骨格の標本は、単一の恐竜ではなく、同じ種の複数の個体の骨を組み合わせたものだ。その正体はまだ判明しておらず、新種の可能性もある。しかし、長い首と尾、そして4本の丈夫な脚をもつなど、ディプロドクス属と共通する特徴が多く見られる。 ギャラリー:決定版!奇跡の恐竜化石たち 長年にわたる労力と数億円にのぼる費用をかけて、絶滅した恐竜を博物館の展示物としてよみがえらせるプロジェクトはどのように進められるのか。
ステップ1:発見と発掘
博物館の研究チームは2007年、米国ユタ州南東部の断崖のそばで、浸食によって露出した竜脚類恐竜の脚の骨を1本見つけ、この恐竜を「ナタリー」と名づけた。 化石の数が多かったため、発掘は困難を極めた。「すべての骨が重なり合ったまま固まっていました」と、古生物学者であるアリッサ・ベルは振り返る。 発掘作業では、まず化石を含む岩塊の周囲に溝を掘り、そこから化石の下を掘って、崩れないように一時的な土台を残す。次に、化石を保護するため、土台ごと麻布と石膏で包む。当初は数人が手で持ち上げられる範囲内だったが、じきに1トンを超えるものも出てきて、重機で持ち上げることになった。
ステップ2:骨の取り出し
発掘された骨の次なる行き先は、ロサンゼルスにある博物館の準備室だ。準備室のスタッフは火花や石片を飛ばしながら、電動の研削工具で余分な石を削り取った後に、ハンマー、のみ、歯科用工具を使って細かい作業を行った。
ステップ3:骨格の復元
解決すべき問題は想像以上に多かった。1億5000万年の間に、背骨の大部分が地下で押しつぶされ、曲がっていたのも、大きな問題の一つだった。そのまま組み立てれば背骨が曲がり、標本全体がゆがんでしまうことになる。 最終的に博物館の恐竜研究所の所長を務める古生物学者で、発掘当初からリーダーを務めていたルイス・キアッペは、より自然な姿にするため、押しつぶされていない椎骨を3Dプリンターで再現してもらった。