じつは、日本列島では「かなりの頻度で起こっていた」…あまりに多くの犠牲者を出してきた「噴火による山体崩壊」。その発生要因と「リスクへの備え」
新たな火山島の出現は、島の成り立ちを知り、地球の活動を知るための研究材料の宝庫。できたての島でなくては見ることのできない事象や、そこから伝わってくる地球のダイナミズムがあります。そして、地球に生まれた島は、どのような生涯をたどるのか、新たな疑問や期待も感じさせられます。 【画像】「街をまるまる飲みこむ」ほどの大噴火を起こした島…日本と同じ島孤だった 今まさに活動中の西之島をはじめ、多くの島の上陸調査も行ってきた著者が、国内外の特徴的な島について噴火や成長の過程での地質現象を詳しく解説した書籍『島はどうしてできるのか』が、大きな注目を集めています。 ここでは、実際に現場を見てきた著者ならではの、体験や研究結果をご紹介していきましょう。今回は、じつは日本で多発している山体崩壊について、その起こるメカニズムを解説します。 ※この記事は、『島はどうしてできるのか』の内容を再構成・再編集してお届けします。
「最多の犠牲者」を出してきた現象
富士山のような成層火山体は裾野が広大で、一見安定して存在しているようにみえる。しかし山体の構成物は火砕物や溶岩で、これらが幾重にも積み重なっているため全体としては不均質かつ多孔質の構造となっている。 そのため山体表層付近は雨水の浸透などにより風化変質を被るだけでなく、山体内部では帯水層が発達したり、マグマや流体が貫入すれば熱水変質が進んだりして、山体全体として弱化が進行しやすい状態にある。火山ごとに程度は異なるが、火山体は常に変質作用を被り、徐々に脆弱化していくという性質を持っている。 「山体崩壊」は、山体構成物の脆弱化に起因し、とくに中型~大型の成層火山体で発生しやすいと考えられてきた。しかし、アナク・クラカタウ火山の例*をはじめ、世界のさまざまな事例を見てみると、若い火山体であっても条件さえ揃えば崩壊に至る場合がある。 *クラカタウ火山の噴火について〈明治日本をも震撼させた「クラカタウ火山」の大ニュース…消滅後の海に現れた「子供島」の成長と、その後の姿〉