スバルのAWD車史上最高の燃費性能が加わった「クロストレック ストロングハイブリッドモデル」に死角はあるか?
世界でポルシェとともに水平対向エンジンを採用し、シンメトリカルAWD、アイサイトなどを搭載するスバルのラインナップの中でも、インプレッサのクロスオーバー版であるクロストレックは、出色の出来の1台と言っていいモデルだ。 【写真35枚】死角ナシの出来…!? スバル「クロストレック ストロングハイブリッドモデル」のディテールを写真でチェック!
「全方位ほぼ死角なし」の”ほぼ”がついに改善!?
基本性能としては、高価な2ピニオン電動パワーステアリングによるスムーズでリニアなステアリングフィールと操縦性、マイルドハイブリッドの濃厚でトルキーな動力性能、オールシーズンタイヤ装着にしてクラスを超える抜群の乗り心地、これまたクラスを超えた車内の静かさ=静粛性、そして3つのカメラによるアイサイト史上最上の安全性能=新世代アイサイトの搭載、悪路、雪道、アウトドアライフにうってつけのXモードによる高い悪路の脱出性能(AWD/2モード、ヒルディセントコントロール付き)、スバルスターリンクのつながる安心としてSOSコール、オペレーターサービスなど、全方位ほぼ死角なしのクロスオーバーモデルに仕上がっているのである。 安全性能に関しても、自動車安全性能でNo.1を獲得(2023JNCAPファイブスター大賞受賞)したほどである。 「全方位ほぼ死角なし」の”ほぼ”の意味は、AWDがメインだけに、燃費性能にあったことはスバルファン、スバリストならどうということはないだろうが(それに余りある魅力があるため)、一般ユーザーからすれば、やや物足りなさを感じる人もいるかも知れないからである。 が、2024年12月、その”ほぼ”の”ほぼ”が一掃されることになりそうだ。そう、スバル初の次世代e-BOXER=シリーズ・パラレル式のストロングハイブリッドが、まずはクロストレックに搭載され、発表されるからである。 かんじんなことを最初に言ってしまえば、これまでのマイルドハイブリッドモデル(e-BOXER)に比べ、燃費は約20%向上。つまり、クロストレックのマイルドハイブリッドモデルのWLTCモード燃費は15・8km/Lだから、19km/L台!?に向上するということになりそうなのだ。 結果、スバルのAWD車史上、最上の燃費性能を実現することになる(執筆時点でWLTCモード燃費は発表されていない)。これはスバリストにとっても、スバルのクルマは欲しいけれど、燃費がちょっとね・・・と躊躇してた人にとっても、大きなニュースと言っていいだろう。※マイルドハイブリッドモデルも併売される。 ハイブリッドシステムを説明すれば、水平対向エンジンはこれまでのクロストレックの2Lから2・5Lのストロングハイブリッド専用ユニットに換装。 スペックはマイルドハイブリッドの145ps、19.2kg-mに対して160ps、21.3kg-mを発揮。モーターもマイルドハイブリッドの13.6ps、6.6kg-mから一気に119.6ps、27.5kg-mへと増大(駆動用バッテリーは118Vから260Vに)。まさにストロングなモータ―パワーを持つハイブリッドモデルになったというわけだ。 EV走行比率が増えることはもちろん、ストロングハイブリッド搭載で車重はマイルドハイブリッドモデルより50kg増し(1610kg→1660kg)になってはいるものの、それをもろともしない動力性能の持ち主になることは間違いない。 スバルの愛用者ならご存じのI(インテリジェントモード=エコモード)での加速力も大幅に高まることになるという。実際、スバルの社内データによると、0-100km/h加速はマイルドハイブリッドモデルより2.1秒も速いとのこと。 ちなみに、2Lエンジンに2モーターのストロングハイブリッドでも良かったのでは?という意見も出るかも知れないが、2Lエンジンでストロングハイブリッドに相応しい動力性能を求めると、燃費が悪化する傾向にあり、2・5Lエンジンのゆとりで動力性能と好燃費の両立を最適化できたと説明される。 しかも、燃料タンクをこれまでの48Lから63Lに増大。ストロングハイブリッド化と合わせ、航続距離はマイルドハイブリッドモデルに対して約60%UP。同時にクラストップともなっているという。 クロストレックがもともと持っていた抜群の快適性やAWDの走破性と合わせ、ロングドライブでのさらなる余裕が生まれることは言うまでもない。 回りを見渡してみると、ストロングハイブリッド搭載車の4WDは電気式を採用する例も多い(トヨタのE-Fourなど)。が、そこは自慢のAWDを持つスバルだ。 本格SUVに準じる機械式AWDを継承し、電気式の「スリップしてから制御」に対して(一例)、スリップする前からAWD制御を行うため、滑りやすい路面などでより安定した挙動が持続可能になるわけだ。 スバルがストロングハイブリッドを初採用したことで得られるメリットは、モータ―パワーの増大、モータ―パワーによる一段とスムーズでトルキーな加速性能の実現、EV走行比率のUP、スバル最上の燃費性能・・・だけではない。 トヨタのハイブリッド車や日産のe-POWERモデルの一部などにあるような、アウトドアや災害時に大活躍してくれるAC100V/1500Wコンセントを純スバル車として初搭載。 ガソリン満タンで家庭に5日分の電力を供給できるのだから、災害時に停電しても、例えば熱帯魚を飼っている人も安心ではないか。 もう1点、ストロングハイブリッド化によってパッケージに悪影響がほぼ出ていない点にも注目だ。 後席居住スペースはもちろん、ラゲッジルームの使い勝手もそのまま。ただし、高電圧バッテリーパックをラゲッジルーム床下に配置することによって、細かすぎる話だが、マイルドハイブリッドモデルよりラゲッジルームのフロアが2cm高くなり、荷室高が708mmから688mmに減少。 容量もフロア上で311Lから279Lに減るものの、しかしそれは開口部段差が小さくなり、重い荷物の出し入れ性で有利になることを意味する。そして、なんと前後重量配分がより理想に近づいたというのである!! 新クロストレックのモデルラインナップは、ストロングハイブリッド採用車がプレミアムS-HEV EX、プレミアムS-HEVのいずれもAWDの2モデル。 マイルドハイブリッドモデルとしてリミテッドのAWDと2WD、ツーリングのAWDと2WDの6モデルとなる。とくに注目したいのは、ストロングハイブリッド搭載のプレミアムS-HEV EXには、EXが示すように、クロストレックの初のアイサイトX=高度運転支援システムが標準装備される点である(レヴーグのEX、レイバックにも搭載)。 後編では、極悪な泥道にも踏み込み走破性能を確かめていく。 文/青山尚暉 写真/スバル、雪岡直樹(マイルドハイブリッドモデル)
@DIME編集部