「トヨタができることはなんでもやる」。ハースF1との提携を推し進めたTGR加地モータースポーツ部長を直撃!
■人と技術が磨かれる点ではF1もWECも変わらない ――加地さんがこれまで関わってきたWECとF1を比べて、どんな違いがあると感じていますか? 加地 F1のようなスプリントレースとWECのような耐久レースでは求められる技術は異なりますが、F1はスプリントレースの中では間違いなく最先端ですよね。特にアップデートのスパンが短いので、絶え間ない開発の中で人と技術が磨かれるんだろうなと感じます。F1のエンジニアリングをピュアに突き詰めようとしている姿勢はエキサイティングだし、こういう世界はすごくいいなあと素直に思います。 でも耐久レースがダメかといえば、決してそうではありません。WECではどれだけ長い時間マシンの性能を出し切るのか、信頼性高く走れるのか、という開発が難しいポイントです。それはそれで最先端だと思っています。24時間、最高時速300キロで走り続けるのは並大抵のことではありません。現代のルマンは24時間のスプリントレースをやっているようなものです。それをやり切って優勝するのは簡単ではありません。 短いスパンでアップデートを重ねていくF1と、数ヵ月の単位でクルマを良くしていかなくてはならない耐久レースとでは、ちょっと開発のベクトルは異なります。でもレースという極限の環境で人と技術が磨かれるという点ではそんなに大きく変わらないという感覚を持っています。 ――今、トヨタとハースの関係は始まったばかりですが、今後はどういうふうに発展していくのが理想だと考えていますか? 加地 境界はあまりつくりたくないと思っています。僕らがチームのためにサポートできることはなんでもやるつもりです。小松さんを始め、ハースのチームの皆さん、それぞれのセクションのリーダーの方から「こういうことをしたい、ああいうことをしたい」というところをいただいて、それを僕らが「こうしたらできるね、ああしたらできるね」とサポートしていくのがベストだと考えています。そういう点に関しては、すでに建設的な話し合いはできていますので、自然と融和していくと思っています。