なぜ横浜DeNAは阪神藤浪の攻略に成功して後半戦初白星をマークできたのか…「攻める」積極打法と“虎キラー”坂本の重圧
初球のスライダーにまったくタイミングが合わずに空振りをしていたが、「攻める」、「振る」という意識をシュート回転してきた2球目のストレートを捉えた。ただバットの先。勢いのないライナー性の打球に対して近本が懸命に突っ込んでくる。 「落ちてくれ!」 柴田の祈りが通じたかのように打球は、スライディングしてきた近本のグラブの横をすり抜けた。勝ち越しの2点タイムリー。阪神ベンチは藤浪に交代を告げた。 アゴヒゲを生やした藤浪は、ワイルドな風貌になっていたが、そのピッチングはワイルドさに欠けていた。「攻める」をテーマにしてきた横浜DeNAの打者のほとんどが、踏み込んで打つことに躊躇しなかった。藤浪は、右足1本で立って、一度、静止する二段モーションもやめ、スムーズに体重移動するフォームに変わっていたが、“間”がなくなり打者がタイミングを取りやすくなっていた。ストレートにもムラがあり、苦しいときのカウント球が「カット」「スライダー」である配球も横浜DeNAに読まれていた。 今回の先発抜擢は、ガンケルがまずファームで調整することになったための代役。報道によると矢野監督は、次回登板について「ガンケル次第」と語ったという。 「はまれば無双」のポテンシャルは見せたが、「投げてみないとわからない」という相変わらずの不透明さも露呈した。 我慢強くそこに賭けるのか、それとも厳しくチーム内競争の原則を守るのか。今後の起用には指揮官の“哲学”が問われるだろう。 藤浪に見えないプレッシャーをかけたのが、“虎キラー”坂本のピッチングだった。実は、4月23日に先発した藤浪とマッチアップしたのが坂本だった。3回までパーフェクト。5回に佐藤、ロハスに連打を浴び、一死三塁から自らのワイルドピッチで同点走者を還してしまったが、6回4安打5奪三振の内容で見事にゲームは作った。 ビシビシとボールをコースに決め、そこに緩急を加えた。つまり阪神にバッティングをさせなかったのである。 五輪による中断期間にフォームを再修正。「曲がり球で空振りを取る」「ベース板上でストレート勝負する」ことを磨いた。特に意識したのが、対左打者の攻略法。インサイドと「外のラインに投げ切る」ことをテーマに取り組んできた。 ファームで調整登板した際、戸柱に「ウィニングショットを意識して三振を取りにいってみたらどうか?」とアドバイスを受け、そこから「意識が変わった」という。 キレのあるチェンジアップ、スライダー、カーブが、ほとんど、低めの凡打ゾーンにコントロールされていた。打者の裏をかいてストレートを要所に使う山本のリードも光った。 「綺麗なピッチングとは言えないが、要所、要所で粘ることができた。野手の皆さんに点をとってもらい余裕ができた。一人ひとり、1球1球、意図を持って投げることができた。(捕手の山本)祐大に感謝したい」 魂のこもった93球である。