キャシー中島「2度の皮膚がんを乗り越え、キルトを生きがいに。右目の下の赤いできものに、怖くて病院に行けなかった私の背中を押した息子の言葉は」
キルト作家としても多忙なキャシー中島さんは、40代のころから指の腫れや痛みに悩まされてきた。年齢のせいと考えて放置していたが、50代半ばでようやく受診を決断。更年期以降の女性に多いヘバーデン結節とわかり、25年も症状とつきあっているという。そして、60代半ばに、顔の皮膚の異変に気づく。不安に陥っていた彼女を病院に向かわせたきっかけは――(構成=村瀬素子 撮影=宮崎貢司) 【写真】「私、化粧が上手なので、わからないでしょう?」とほほ笑むキャシーさん * * * * * * * ◆小さな赤い点を発見!怖くて病院に行けず じつは64歳のときに、皮膚がんも患いました。ある日、右目の下に赤い小さなできものを発見して。肌の炎症かしら、そのうち治るだろうと思っていたら膨らんできてしまいました。かさぶたになり、取れて、またかさぶたに……と、徐々に大きくなっていったのです。 娘(アーティストの勝野雅奈恵さん)が、インターネットで調べて「ママ、それはよくないものかもしれないから病院に行って」と言ってくれたのですが、なかなか勇気が出ません。 もし皮膚がんだったら、顔の皮膚をガサッと取ってしまうのかしらと不安になったのです。一方で、「いや、単なる皮膚炎。がんのはずはない」と否定する気持ちもあって、しばらく病院に行けませんでした。 それで、このときも2年近く放置してしまい、赤いできものは5ミリぐらいの大きさに。さすがに病院に行くべきかと悩んでいたとき、背中を押してくれたのは、「顔にちょっとくらい傷ができても、ママはチャーミングだから大丈夫だよ」という息子(手芸家の勝野洋輔さん)の言葉でした。
診断の結果は基底細胞皮膚がん。転移しにくいがんなので、手術してもそんなに切らないから大丈夫ですよ、と医師に言われましたが……実際はやはりショックでしたね。直径が1.5センチ、深さ1センチほど皮膚をえぐり取られましたから。 「顔に大きな傷ができちゃったな……」と涙がこぼれました。でも、縫わないで自然に皮膚が回復するのを待ったおかげで、傷痕は残りませんでした。 結果論ですが、もっと初期段階で病院を受診すればよかったという後悔はあります。赤い発疹をがんだとは思っていなかったので、肌を整えようと思ってフェイシャルエステに通ったりして、悪化させちゃったかなと考えたりしますね。 じつは、その5年後にも、再び皮膚がんを発症。最初の手術以降は定期検診を受けていたので、このときは早期発見できた。ちょっと赤みがあるだけの小さながんでした。 私にはアイルランド系アメリカ人の父の血が流れています。体質的に色素が薄く、皮膚がんになりやすいそうです。そういう情報も得ていましたし、2回目なので1回目よりはショックが少なかった。 ただ、がんができた場所が鼻の横。手術後に縫う必要があって、鼻の右横から頬にかけて、縦長に20針以上も縫ったのです。太い糸でパッチワークを施したような顔を鏡で見てギョッとしましたけど、「先生、縫い方が上手ですね。キルトやりませんか?」と冗談を言えるくらい、落ち着いて受け止められました。 よ~く見ると、縫ったところはちょっと色が違うけれど、私、化粧が上手なので、ほら、ほとんどわからないでしょう?(笑)