五郎丸の豪レッズでの挑戦は失敗だったのか?
後半15分、レッズの五郎丸歩がチームのピンチを防ぎにかかる。 「一番、後ろにいるので…。負けたくない思いで入りました」 対するサンウルブズが敵陣深い位置で左端から順にフェーズを重ねていた時だ。 スクラム最前列中央のフッカーながら「アタックの時は外へ入ろう」と考えていた堀江翔太キャプテンが、右外のスペースへパスを放る。身長194センチ、体重114キロのリアキ・モリがインゴールへ突っ込む。 その前線へ、最後尾のフルバックを担う日本の有名選手がカバーに回ったのだ。 相手を掴んでいない「ノーバインド」気味のタックルで、激突。自分よりも9センチ、15キロも大きなランナーに身を投げ出した。ぶつかられた方は、どうにかゴールエリアにグラウンディングを決めたようだった。レフリーが映像を見返した結果、サンウルブズのトライが判定された。25―25。スコアは同点となり、右肩を痛めた五郎丸はグラウンドを後にした。 ノーサイド後の共同会見に呼ばれた五郎丸は、「ノープロブレム」と強調した。ぶつかった瞬間の痛みを何度も聞かれても、「そんなの、言えるわけないじゃないですか」と断じた。 ラストパスを放った堀江は「肩、大丈夫かな」と感じた。お互い、昨秋のワールドカップイングランド大会で日本代表だった間柄だ。グラウンド上で握手を交わした際は、「肩、どう」「痛い」といった程度の会話はかわしたという。 2016年5月21日、オーストラリアはサンコープスタジアム。スーパーラグビーの第13節があり、五郎丸とツイ ヘンドリックといった日本代表選手を擁するレッズが日本から初参戦のサンウルブズと激突した。 勝ったのはホームのレッズ。五郎丸が退いた後に勝ち越し、35―25とした。 この午後、公式で「19073人」の観衆には東洋人の顔も多く、サンウルブズの立川理道ゲーム主将も「レッズのジャージィを着ている日本人の方もいて。本当はサンウルブズを応援してほしかったですけど、それでもラグビーの人気が高まって嬉しい」と笑って振り返るほどだった。 日本人メディアからのサンウルブズ勢への質問も概ね、対戦相手のフルバックに関するものだった。五郎丸と同学年の山田章仁は、「いままでチームメイトだった選手と真剣にやり合えるなんて、ラグビー人生ではなかなかないこと」と殊勝に振り返った。 ワールドカップ以来久しぶりにラグビーに触れた人の関心事のひとつは、「五郎丸は豪州に本拠地を置くチームへの挑戦でどう変わったのか」だろう。現象と証言からひも解く。