五郎丸の豪レッズでの挑戦は失敗だったのか?
今季の初戦、フルバックだったカーマイケル・ハントの故障もあり背番号15を付けた五郎丸は、国内プレー時とは歩幅などを変えたフォームから5本中4本を決め、「(感触は)良かったと思いますよ」と述懐した。ちなみにフォーム変更の背景には、スーパーラグビーのレフリー陣が目指すスムーズな試合展開がある。ゆったりとした動作で蹴る選手は、どうしても急かされる傾向にある。 一方、サンウルブズ陣営は「ゴローさんはディフェンスをする時に(前に)上がって来るので、その裏に蹴ろうとしていた」と立川。サンウルブズが中盤で攻撃を続ければ、飛び出した五郎丸の背後や、五郎丸が長距離走らねばならぬ区画へキックを放った。堀江、山田、立川ら、イングランド大会時の戦友を10人も在籍させるチームだ。スカウティングにはずれは少なかった。 ここまで、レッズの試合があった12戦中先発は3試合のみ。現在療養中のハントはランニングスキルと強さで魅せる29歳で、近日中のオーストラリア代表候補入りが待たれているのだ。 五郎丸と親交のある立川は、「日本代表や(国内所属先の)ヤマハでは、ゴローさん中心の組み立てもあったと思うけど、レッズはそうではなくて」と見ている。「ディフェンスをする時に(前に)上がって来る…」などの見識も、チームメイトとなったこともある同国出身選手としての率直な分析内容だったろう。五郎丸の変化を聞かれたサンウルブズのある選手は、「特に…。キックのルーティーン(動作)が変わったくらい」と答えていた。 かねてから、本人は話していた。 「成功より、失敗がしたいです。日本にいるとなかなか失敗することがなくなりましたが、海外でいっぱい失敗して、最後はそれを成功に繋げたいですね」 昨夏にはワールドカップ後の代表引退さえ示唆していた30歳のアスリートだ。イングランドから帰国後は、グラウンド内外における個人の成長、豊穣な経験値の獲得にフォーカスを置いていた。言葉の通じづらいチームでキック処理に難儀する状況、列強国のライバルと出場機会を争う環境にも、自ら望んで飛び込んでいるかもしれない。 試合出場と活躍をアスリートの「成功」と捉えるなら、五郎丸のオーストラリア挑戦は現段階では「失敗」の部類に入るかもしれない。本人は「海外(での生活など)を経験できているのはいい」と話しているが、それとオン・ザ・フィールドとの結びつきは薄い。