「それでも私は結婚したい…」フラれて泣いた日々に、いつかサヨナラ…進藤さんの婚活漂流記 #ザ・ノンフィクション #ydocs
ところが翌日、「結婚観の違い」を理由に彼女から「交際終了」の連絡が来た。家に帰って泣き、そのあと1週間ほど立ち直れなかった。 「何か大きな失敗をしたという自覚がなかっただけに、苦しくて、苦しくて……。今思えば、彼女と温度感のズレがあったと反省しています。住む場所や結婚の時期についても、もっともっと彼女に同調して、希望に沿った言葉を選ぶべきだった」 たった一回のデートで「判断」を下される婚活。 頭を抱えてうなだれる進藤さんを見て、私は「もう婚活をやめてしまうかもしれない」と感じた。しかし、進藤さんはやめなかった。彼を支えていたのは「絶対に結婚したい」という強い思いだった。 スポーツは苦手、勉強も中の下。一緒に遊ぶような友達もいない。中高一貫の私立の男子校に進み、そのまま付属の大学へ。唯一頑張ったといえるのは、高校時代の演劇部。それ以外は「流れに任せるように、ただなんとなく生きてきた」という。 そんな彼が人生で初めて本気になって取り組んだのが、婚活だった。 「しょうもない自分の人生をここで変えてやるって思いました。何があっても食らいついて頑張ってやろうと。そうすると、だんだんと『自分の道は自分で選び取るんだ』という意識が芽生えてきたんです」
「彼女の不安を取り除きたい」 真剣交際から成婚へ…ひたむきに努力を重ねる
実は新田さんと同時並行で「仮交際」に進んでいる女性がいた。別の結婚相談所に所属している1つ年上の女性で東京大学の出身。 「頭が良くて、気が利いて、一緒にいるととても楽しい。新田さんの時のような恋心はありませんでしたが、徐々に『彼女とうまくいきたい』という気持ちが強くなった。一流企業に勤めていて両親の職業も立派。植草先生は『学歴の差』を心配しているようでしたが、取引先にも東大出身の人はたくさんいるので、あまり気にしませんでした」 仮交際をスタートして2カ月を過ぎた頃、進藤さんは彼女に「真剣交際」を申し込む。「真剣交際」とは、同時に3人まで交際できる「仮交際」の状態から進み、成婚に向けて1対1で条件や気持ちを擦り合わせていく期間を指す。 しかし、彼女からは「もう少し様子を見たい」と保留される。 彼女の返事を待ちつつ、進藤さんは母親と暮らす実家を出て都内で一人暮らしを始めた。 日々の生活に必要な費用や、仕事終わりの家事の大変さを身をもって知った進藤さんは、目に見えて「生活感」を身に付けていった。それが女性との会話にも役立っているようだった。 新居に遊びに来て、進藤さんの頑張りを目にした彼女は、仮交際4カ月目にして「真剣交際」を承諾。進藤さんは初めてたどり着いた「真剣交際」にとても喜んだ。 ところが、彼女の実家に挨拶に行こうとしたところ、先方の相談所から「彼女の気持ちは、まだその段階ではない」と言われてしまう。 相談所連盟には、仮交際のスタートから最長で6カ月までしか交際できないというルールがある。植草さんは焦ったが、先方の相談所を通してしか彼女の様子が分からないので、見守るほかなかった。 一方、進藤さんは仕事終わりに毎晩自炊をし、メキメキと料理の腕を上げていた。聞けば、2回目の自宅デートの時に昼食作りを失敗してしまい、不安を感じた彼女から「毎日の自炊メニューを写真で送って」と頼まれたという。「そんなことまでするんですか?」と私が聞くと、彼は何食わぬ顔でこう言った。 「この程度のことで彼女の不安が取り除けるのであれば、別にいいじゃないですか」 彼の言葉に、婚活で奮闘する個人の思いは、これほどまでにひたむきで純粋なのだとあらためて知らされた。