ひとりっ子が考える介護…カリスマ介護士が語った「認知症の親が一番嬉しいこと」
介護の法改正で起きている問題
家族だけで介護を背負うわけではないのだ、と安堵したのも束の間、にしおかさんが眉間にしわを寄せて話し始めてくれた内容に、再び不安な気持ちが押し寄せる。 この問題に関しては、先にジャーナリストのなかのかおりさんが詳しく紹介している。 にしおかさんは、テレビのロケで幾つかの民間の介護施設を見学。どの施設もそれぞれ特徴があり素晴らしかった。ネットで調べるだけでなく、実際に足を運んだほうが、お母さんに合う施設選びができる気がしたと。一方で、どんなに良くても、にしおか家の経済事情では施設の利用料が高額で厳しい可能性があると話していた。 にしおか「では、ウチは在宅で見守るとして。最近、ちょっと気になることがあるんです。国の介護報酬全体は上がりましたけど、訪問介護は下がりましたよね? ただでさえヘルパーさんの人数が減っているって聞くんですよ。それが更に加速しません? 例えば、ヘルパーさんが今まで週に3回、訪問介護に行けていたのに、人手不足で1、2回しか行けないとか、緊急の時にかけつけられませんみたいなことになりません? 私たち、サービスを利用したい側も、介護保険の自己負担が1割から2割になるかもとか、要介護1と2は介護保険から外れるかもとか。でも、65歳以上の介護保険料は上がってますよね。そうなると例えば、デイサービスに週2回行きたいのに、お金が厳しいから1回でってなりません? 保険料を支払っているのに、使いたいときにサービスが上手く利用できないんですかね」 高口「にしおかさん、素晴らしい! にしおかさんからこんなお話が出てくるなんて! 地域包括支援センターさえ知らなかったのにね」 にしおか「そうですよ!(笑)。今もわかってないことだらけですけど、でもだいぶ成長しましたでしょう? 我が家の幸せを確保するために必死ですから。受けたいサービスが自由に受けられなかったら、ウチはきっと在宅介護ではなく、在宅放置になってしまう!と思ったんです」 高口「この法改正で現場は困惑しています。そもそも介護保険は在宅介護を推進しましょう、ということで生まれたんですよね。 もし、在宅介護ができなくなったら、施設がありますからね、という趣旨だったのに、高額な月々の支払いを考えたら、入居させてあげられないご家庭も多いと思うんです。 だからと言って、在宅介護を優遇する支援が増えたかというと、その逆が起こっています。にしおかさんがおっしゃる通り、ヘルパーさんへの基本報酬が下がってしまいましたから」 にしおか「私は、自分が元気でなければ、家族を幸せにできないと思っています。本当にしんどくなったら、全部ぶん投げて逃げることも選択肢のひとつに入れています。 でも、できればぶん投げる前に、私の心に余力があるうちに、福祉の力、ヘルパーさんのサポートに頼りたいです。なんとかこれなら母と姉が生活できるという算段をつけたいです。それが整わないのに、その状態で、私は本当に逃げ出すことができるのだろうか? ヘルパーさんに救われている方々ってホントにたくさんいると思うんです。そんな尊いお仕事をされている方々の報酬を下げたらダメでしょ。お給料をまずアップしてくださいよって思ってしまいます」 高口「介護保険は、女性ばかりが在宅介護の負担を背負っていた歴史の背景から生まれたのに、今回の法改正で逆戻りしてしまう可能性が出てきてしまいました」 法改正は3年ごとに大きな見直しがある。となると、次の改正は2027年になる。 超高齢化社会に突入する局面での、今回の法改正。果たして誰もが安心して介護生活を迎えられる社会は訪れるのだろうか。我が身のみならず、我が子に、次世代にだって負担はかけたくない。 高口「私にも解決法がわかりません。でも、とにかく声をあげ続けなくてはなりません。 まだ介護生活に向き合うことなく暮らしている人にとっては、他人事のように感じるでしょう。まずは利用している人たちが、積極的に声をあげて欲しいと思います」