「人口減少社会」では民主主義は機能不全に陥る
国はそれを支援はしても妨げない。それが人口減少社会において、「地域軸」を強く意識した医療・介護政策のあり方になるのだと私は思っております。 ■地方における医師確保問題の障害とは? とは言っても、地域ではいかんともしがたい問題があって、それは医師の確保です。この問題を解決するために、「医師需給分科会」というのが2015年12月から6年間にわたって計40回の会議を行っていました。 欧米でも医師の地域偏在問題はものすごく深刻で、かなり研究が進んでいます。その結果、医師の地域偏在を解決するための政策技術は大体わかっていて、エビデンスレベルの高い順に言うと、地元枠、次に総合診療医というのは地域に根づきます。そして、3番目が地域医療の経験です。若いときにやる。
WHO(世界保健機構)は2010年に国は医学教育への介入が不可欠と言っています(「日本の大学の医学部教育は何が問題なのか?」<東洋経済オンライン>)。 それは医学部で地元出身者を優遇すべし、homecoming salmon hypothesis、私は鮭の母川回帰仮説と訳していますが、そういう仮説に基づいての提言ということで、これは日本でも進めてきました。 地元枠ではないのですけれども、地域枠というところで、若い人たちの医師の配置というのが地域偏在という観点から見て割とまともになってきているという成果が出てきています。
偏在問題を解決するための総合診療医の育成は、医師需給分科会でも繰り返し、5回に渡る中間報告書に繰り返し書かれるのですけれども、いつものように日本の民主主義プロセスで抹殺されていきます(「プライマリ・ケアって何? ――松田晋哉先生、草場鉄周先生との鼎談」<note>)。 3つ目の地域医療の経験は、2018年の医療法改正でできた医師少数地域での医療従事経験を認定して管理者要件とする制度でした。これは若い人たちを地域の医師の供給源として派遣するというのではなくて、地域医療を経験してもらうという意味です。若いときに経験すると、なるほど、おもしろいではないかという意識になって、後に地域医療に貢献してくれる人たちが出てくるということです。