「人口減少社会」では民主主義は機能不全に陥る
ところが、2018年の医療法改正から6年たつのにいまだにどこも手を挙げておりません。 最後に地方創生についても話をしてくれという話があったのですけれども、今の日本には、高齢者には年金もあれば、医療・介護需要もあります。 そして、年金や医療・介護の財源は、負担能力が高い関東とか東海地方が多く負担してくれて、給付は高齢者が多い地方に流されています。つまり、140兆円近い社会保障給付は都道府県間で壮大な再分配をはたしてくれているわけです。
高齢者は経済の宝だと私は言っているのですけれども、私の高校の先輩に中村哲さんがいて、ペシャワール会に連絡をして、私がやりたいのは中村さんがアフガンでやったこと、すなわち砂漠にかんがい施設を造って、青々とした緑の大地に変えることなのだということを伝えて、あれを日本の経済でやりたいんだという説明をして、こういう話をどんどんしていくよと言っております(「高齢者は経済の宝、社会保障で地方創生は可能」<東洋経済オンライン>)。
■むかし公共事業、いま社会保障 現実には、年金の家計最終消費支出比では鳥取県と島根県は結構高いのですけれども、年金がどれだけ占めるかというと鳥取も島根県も22%を占めていますし、そのうえに医療・介護の需要もあるから、若い人たちの雇用を生んでいます。酒田の日本海ヘルスケアネットは酒田市役所の2倍以上の雇用を生んでいます(院内の臨時・委託・院内出店勤務者含む)。 福井に新幹線が通ったときに私が県の人たちに言っていたのは、新幹線に乗って東京の退職者が移住してきたら、駅で医療者と介護者がいらっしゃいませと迎えて、パーフェクトな地域包括ケアで迎えるためのまちづくりをしようと話しています。
しっかりと医療・介護、そして、年金というようなことの需要がある、支払い能力のある人たちを迎えるまちをつくっていくのだというような話をしたりしているわけです。 地方に所得を流すチャネルがかつての公共事業から今は社会保障に変わったわけで、かんがい施設としての社会保障というのは、地方創生とまではかっこよく言いませんけれども、地方の持続可能性を高めるためにしっかりと機能しているということはこれからも言い続けていきたいと思っております。
権丈 善一 :慶應義塾大学商学部教授