アキレスは亀に追いつけない? 「円周率の日」に考える無限とパラドックス
3月14日は、数学好きにとって特別な日です。3月14日=3.14……。そう「円周率の日」です。円周率とは、言うまでもなく、円の面積(半径×半径×円周率)や円周の長さ(直径×円周率)を計算する公式で使う無理数です。「円周÷直径」によって求められますが、割り切れないため無限に続くのです。今回は、この円周率の日にちなみ、有名な「アキレスと亀」のパラドックスをテーマに「円周率と無限」について考えてみたいと思います。
無限に続く円周率
「3.141592653589……」と無限に続く円周率。皆さんは何桁まで暗唱できますか? 私は15桁までくらいしか暗唱できませんが、日本には10万桁まで暗唱できる人もいるそうです。 そもそも円周率は何桁まで正確に求められているのでしょうか。答えは、なんと約22兆桁。気が遠くなるような数字ですね。暗唱すると、どれくらいの時間がかかるのでしょうか。試しにストップウオッチを片手に円周率を10桁唱えてみたところ、私は2.5秒かかりました。これをもとに22兆桁の暗唱にかかる時間を計算してみると、17万年以上……。全部唱えるのはちょっと無理かもしれません。 スーパーコンピューターの活用など人間が叡智を結集して求めたこの22兆桁の円周率ですが、実は「無限」という概念から見ると、全然大した数字ではありません。これから先、私たちが何百兆、何千兆という桁数を求めたところで、無限の円周率からすれば小指の爪の先ほどもないのです。そう考えると無限とは恐ろしい規模ですね。
「無限」とパラドックス
ここからは、その無限に焦点を当てていきます。 「パラドックス」という言葉を聞いたことがあると思います。一般的に正しいと思われていることに反する状況のことで、論理的な推論をしているはずなのに、現実的に信じられないような結論が出てくることをいいます。無限をネタにしたパラドックスは、たくさんあります。私が数学科に進んだきっかけも、無限やパラドックスといったものに面白さを感じたからですが、今回はその中でも特に有名なものを紹介します。そして、そこから発生する「無限とは何か?」という哲学的な問いを考えていきたいと思います。