老親には"拉致車"にしか見えない…「介護施設に行きたくない」とゴネる親をデイサービスに通わせる方法
■デイサービスに行きたがらない理由は人それぞれ でも、よくよく話を聞いてみると、以前は自宅で編み物教室を開いていたと言うんです。ということは、人にものを教えることは好きなわけで、元から人との関わりが嫌いではなかったはず。 それがわかったので、私はデイサービスにお誘いしてみようと思ったのです。そこで一計を案じて、編み物の先生として来てもらおうと考えました。 最初はその方の家に、「編み物を習いたいので、教えてください」と編み物の本と道具を持って訪れました。そうしたら嬉しそうに、その場ですぐ教えてくださったんです。これならお連れできるかもしれない。 そう思ったので、「私と同じように、編み物を教わりたいという人がたくさんいるんですけれど、一緒に来て教えてくれませんか? 車も用意してあるので」とお誘いしたら、すんなりと乗車してくださいました。実際にデイサービスで皆に編み物を教えている姿は、とても楽しそうでした。 高齢者のなかにはいろいろな考え方の人がいて、ひと口に介護サービスに行きたがらないと言っても、理由は人それぞれです。もともと人づき合いが苦手な人もいれば、病気がきっかけで内向的になってしまった人もいます。 私が、本人の生活を考えたら、この方はデイサービスに行かないほうが幸せだろうなと思ったとしても、ご家族は無理やり連れて行ってくれと頼んできます。本人のためと言いながら、本人の意向などそっちのけ。家にいてもらうと仕事ができないから、息抜きしたいからと、家族の都合だけで強制的に行かせようとします。 ■施設の生活をイメージできる高齢者はほとんどいない 本来、私たち介護職は、「ご本人にとって、それはいいことなのだろうか」とフラットに考えなければいけないのに、ともすれば「ご家族も大変だし」という日本人的な意識が働いて、ご家族ではなく、ご本人を説得してしまうことがあります。でも、それはやはり違うと思うんです。 かつてデイサービスの車を「拉致(らち)車だ」と言っていた利用者さんがいましたけれど、本人にしてみたら無理に追い出そうとしているのだから、そう見えて当たり前ですよね。それは、デイサービスに限らず、施設に入る場合にも言えることです。 よく、子どもが「お母さん、もう施設に入るしかないよね」と説得しようとしますが、そもそも高齢者の何%の人が、入居したあとの生活を想像できているでしょうか。どうしたら、自分が穏やかでいられるかを考えているでしょうか。きっと入居したらどうなってしまうんだろうと、不安が大きいはずです。 ですから、やはり親が納得しない限りは、子どもが無理強いすることはできないと考えます。ただ、これ以上自宅にいると、本人のためにも家族のためにもよくない。親子の関係が悪化することが明らかになっているのであれば、私も入居を勧めると思います。