世界の氷河の半分が2100年までに消失も、IPCCを上回る最新モデルの予測を発表
氷河が消えると何が起こるのか
氷河の消失はまた、これを水源としている人たちにも多大な影響を及ぼす。 アグアヨ氏によると、氷の体積が減少する割合は、必ずしもそのまま水の供給量が減る割合として解釈できるわけではないという。 「もっと悪い数値になることもあり得ます」と氏は言い、住民が飲料水を氷河に頼っている流域のなかには、乾期に融氷水が大幅に減るところがある可能性を指摘する。 居住地が氷河の近くではない人も、海面上昇の影響を受ける可能性がある。 世界の氷河は、約30センチの海面上昇に相当する水量を保持しており、過去20年間ですでに約1.3センチの海面上昇を引き起こしている。 「一見、大したことはなさそうに思えるかもしれません」と、米ウッズホール海洋研究所の氷河学者キャサリン・ウォーカー氏は言う。 しかし、「3メートル以上の高潮に見舞われる場所のことを考えれば、氷河が解けて水位がさらに30センチ上昇することは避けたいと思うはずです」 今回研究チームが出した結果は、彼らが2023年に学術誌「サイエンス」に発表した氷河モデルによる予測とよく似ている。 「政策立案者に提供する数値について、これでさらに確信を持つことができました」とゼコラリ氏は言う。 新たなモデルのもう一つの利点は、さまざまな規模で予測できる能力だ。 「地球規模でのモデリングだけでなく、個々の氷河に何が起こるかを示すことができるという点で非常に優れています」とウォーカー氏は言う。
2100年以降も温暖化は続く
今回の研究では、21世紀末までの予測に焦点を当てているものの、氷河が気候変動に完全に反応するには、さらに長い時間がかかるだろうと、ゼコラリ氏は指摘している。 「長期的に見れば、はるかに多くの氷河が失われることは明らかです」 グリーンランドのフィヨルドでは近年、すでに厚さ数十メートル分の氷が失われていると、アルティ氏は指摘する。「それは実に衝撃的な光景です」 氷河の氷はそれ以外の場所でも消失しており、あとには岩石が散らばる荒涼とした光景が残されるばかりとなっている。 「氷河は地球の景観にとって永久不変の特徴ではありません」とアルティ氏は言う。「氷河は人間のタイムスケールにおいて急速に変化することがあり、われわれは今、それが起こっているのを目の当たりにしているのです」
文=Theo Nicitopoulos/訳=北村京子