世界の氷河の半分が2100年までに消失も、IPCCを上回る最新モデルの予測を発表
温室効果ガス排出量の実質ゼロ達成でも4分の1が解ける
2100年までに地球の氷河がどれだけ解けるかを研究者らがモデル化したところ、予測される氷河の消失量は、国連の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)による最新の報告書で予測されているよりも多く、温暖化の程度に応じて4分の1から半分程度が失われる見込みだという。論文は11月15日付けで学術誌「The Cryosphere」に掲載された。 ギャラリー:息をのむほど美しい氷の世界、グリーンランドの写真22選 1971年、グリーンランドの氷を調べていた研究者らは驚くべき発見をした。数千年前、この島の気温はごく短い期間に大幅に上昇していたのだ。この発見は、わずか数十年の間に急激な温暖化が起こり得ることを明らかにし、自然な気候変動についての常識を変えた。 現在、世界はまた別の大々的な変化の真っ只中にある。今回それを引き起こしているのは人為的な活動だ。そして科学者らは、気温の上昇に伴い、氷河が今後どのように変化していくかについて予測している。 「現在われわれが進めているスイスの氷河でのフィールドプログラムでは、現地を繰り返し訪れて氷の融解の程度を確認していますが、その変化は極めて大規模です」と、論文の筆頭著者であるスイス、チューリッヒ工科大学およびベルギー、ブリュッセル自由大学の氷河学者ハリー・ゼコラリ氏は言う。 世界に20万カ所存在する氷河の大半も同様に、温暖化の明らかな兆候を示しており、平均で年間90~180センチの割合で薄くなりつつある。
排出が削減されないシナリオでは氷河の半分が消失
一つひとつの氷河の年間消失量を単純に合計しても、どれだけの氷が残るかについての正確な予測にはならない。 「氷河は流動的であるため、気候に対して複雑な反応を示します」と、米航空宇宙局(NASA)ゴダード宇宙飛行センターの氷河学者リズ・アルティ氏は述べている。 この要素を考慮に入れるために、ゼコラリ氏のチームは、2つのコンピュータモデルを用いて、氷河の動きと量の変化の複雑な物理的過程をシミュレートした。 彼らはまず、2000年から2019年までの期間についてのモデルを実行し、予測される氷の量の変化が実際に観測された変化とできる限り一致するようパラメーターを調整した。実際の変化は2021年に学術誌「ネイチャー」に発表されている。 「今は世界中にあるすべての氷河の衛星観測データが手に入るため、われわれはそれを用いてモデルの調整を行いました」と、論文の共著者であるブリュッセル自由大学の水文学者ロドリゴ・アグアヨ氏は述べている。 次にチームは、世界が温室効果ガス排出量をどれだけ削減できるかに基づいた気候シナリオを用いて、21世紀末までのシミュレーションを行った。 その結果、世界の氷河の体積は2100年までに、温暖化の程度に応じて2015年に比べて25~54%失われることが明らかになった。IPCCの報告書では2100年までに18~36%が消失すると予測されていた。 たとえば、21世紀半ばまでに排出量の実質ゼロが達成されたと仮定するシナリオでは最も低い推定値となる一方、排出量が現在のレベルで維持されるか、さらに増える場合には、推定値は徐々に高くなっていく。 国連環境計画(UNEP)が10月に発表した「排出ギャップ報告書2024」では、各国が速やかにクリーンエネルギーへの切り替えを行わない場合、排出量は中間的な水準になることが示されている。 チームはまた、地域ごとのスケールでも氷河の消失を計算しており、多くの場合、より高い消失量が予測された。 「地域によっては、たとえ温暖化が限定的でも、氷がほぼ完全に消失するところがあります」と、ゼコラリ氏は言う。たとえば、カナダ西部、米国、南アジア東部、中央ヨーロッパなどに位置する氷河がそうだ。