J1再開!なぜ名古屋グランパスは新型コロナ禍を乗り越えてJ1通算400勝を果たすことができたのか?
執念のビッグセーブが仲間たちを鼓舞したのか。3分後に東京五輪世代のFW相馬勇紀がこぼれ球を押し込んで同点にすると、40分にはFW前田直輝が右サイドを果敢に突破。スピードに乗った体勢から放ったグラウンダーのクロスが、エスパルスのオウンゴールを誘発して勝ち越した。 後半12分にはペナルティーエリア内から再び金子が放った一撃を、今度は右手一本で阻止。失点の借りを返したランゲラックは「あそこから乗れたと思う」と、前半のセーブを笑顔で振り返った。 シュート数はゼロだったものの、金崎も指揮官の期待に応えてみせた。前への推進力を欠き、同時に前から相手のボールホルダーにプレッシャーをかけられなくなっていた時間帯。持ち前の闘争心を前面に押し出し、鬼気迫る表情で前線を走り回って激しい雨中で戦うグランパスにパワーを与えた。 公式戦が中断していた3月にサガン鳥栖からの期限付き移籍で、約8シーズンぶりに復帰した。大分トリニータを皮切りにグランパス、海外挑戦をへて鹿島アントラーズ、サガン、そして2度目のグランパスで積み重ねてきたJ1の通算出場試合数は、エスパルス戦で節目の「300」に到達した。 2018シーズンに得点王を獲得するなど、2年間の公式戦で33ゴールを決めたFWジョーとの契約解除が先月21日に発表された。今シーズンの始動後に左ひざの不調を訴え、開幕前に母国ブラジルへ帰国したままの状態が続いていたが、急きょ獲得した金崎を含めたFW陣が戦力ダウンすることはありえないと、フィッカデンティ監督は再開を前に絶対的な信頼を寄せていた。 「誰を使えばいいのかがわからないような、ものすごく高いレベルでの競争が行われている。そのなかで試合に出る権利を勝ち取った選手たちが、素晴らしいプレーをしてくれると信じている」 最後まで新型コロナ禍に振り回されたクラブとなり、必死の調整でこぎ着けた再開初戦でも相手に先制され、後半アディショナルタイムには相馬が2度目の警告を受けて退場した。最後は10人になりながら、執念でもぎ取った勝利は特別な意味をもっていた。 アントラーズ、横浜F・マリノス、浦和レッズ、ガンバ大阪に続くJ1通算400勝への到達。フィッカデンティ監督は「今日のようなゲームをしてくれた選手たちを誇りに思う」と、さまざまな逆境を一丸となって乗り越えた90分間を称賛しながら、ホームの豊田スタジアムにガンバを迎える8日の第3節で401勝目をあげるための戦いへすぐに思考回路を切り替えていた。 (文責・藤江直人/スポーツライター)