新富裕層はどんな人? 事業、不動産投資、暗号資産など「令和の金持ち」が明かす実態 #令和に働く
国民生活基礎調査によると、2022年の所得金額階級別世帯数の中央値は405万円で、10年前の432万円から6%以上減少している。一方で、個人の金融資産は2023年末で過去最高の約2141兆円。10年前の1644兆7310億円と比べると、30%も増加した。“お金持ち”は増え、格差は確実に広がっている。では、そんな“お金持ち”はどのように稼ぎ、どんな生活をしているのか。中小企業の経営者や高所得サラリーマン、仮想通貨の“億り人”など、さまざまな“お金持ち”に取材をすることでその実像が浮かび上がった。(文・写真:ジャーナリスト・小川匡則/Yahoo!ニュース オリジナル 特集編集部)
「年収3000万円くらいの感覚」
東京都港区の高級住宅街にあるタワーマンションの一室。高層階から都心の景色が一望できる。 この部屋に住むのは都内で不動産仲介業を営む西村健一さん(41歳、仮名)だ。 西村さんは一人暮らしのため1LDKだが、家賃は約30万円と高額だ。車はベンツに乗り、ロレックスなど高級腕時計を身につける。ただ、年収は「決して多くなく」1200万円だという。 「自分の会社なので、役員報酬は月額100万円と自分で決めました。他の役員も同じです。自分の報酬を多くしても所得税で持っていかれるだけですから。そのかわり、家賃や車、それに飲食代やゴルフ代などの交際費は経費として落としています。生活の度合いとしては、給与だけをもらっている人に換算すると、年収3000万円くらいの感覚でしょうか」
西村さんは都内の私立大学を卒業後、人材系企業に就職。以後、IT、住宅メーカーと3社をビジネスパーソンとして渡り歩いた末、2017年、34歳のときに不動産仲介業として起業した。 「会社員時代は人一倍働いていましたが、年収は多いときで700万円くらい。ごくごく普通のビジネスパーソンでした。子どものころから『いつかは起業したい』と思っていたので、まずは自分一人で事業を起こしてみました」 創業当初は自らの人脈で仕事を獲得し、順調な滑り出しだった。しかし、翌年から事業拡大を目指して従業員を雇い始めると、それが重いコストとなった。 「不動産物件の売買を仲介するというシンプルな仕事なので、契約できた案件の金額と件数によって売り上げが決まります。しかし、雇った従業員は何カ月も全然契約を取れなかった。結果、その人の給料分まで自分が2倍働くようになってしまった。完全な消耗戦でした」 3年ほど苦しい期間があり、その間、自身は20平米の1Kの部屋で暮らしていた。それでも歯を食いしばり、業績が徐々に上向いてくると、少しずつ大きな案件も扱っていった。すると、銀行からの融資もおりやすくなり、不動産仲介だけでなく、自社で中古マンションを購入し、リノベーションして販売するなど事業の幅も広がった。そして起業から8年目となった現在は従業員も8人にまで増えるなど軌道に乗った。 ただ、西村さんは自身が“成功”したとも、“金持ち”だとも思っていないと言う。 「比較的高級な飲食店を使うようになったり、お付き合いでゴルフに行くようになったりということはあります。でも、それも結局仕事につながっている。業務の一つですし、経費です。うちの会社を利用してくれた方が、別の方をご紹介してくれることもあります。だから、基本的には会社の事業に使えるだけお金を使っているという感覚ですね」