新型コロナは「11波」鮮明でさらに拡大も 幼児の感染症も増加し、厚労省が注意呼び掛け
手足口病、41都府県で警報レベル
手足や口の粘膜に発疹ができ、乳幼児を中心に流行する手足口病の感染者数も過去10年で最多のペースで増加している。手足口病の原因ウイルスはコクサッキーA群ウイルスやエンテロウイルス71型が主だ。咳やくしゃみなどによる飛まつ感染や経口、接触感染で広がる。 国立感染症研究所によると、7月15~21日に全国約3000の定点医療機関から報告された感染者数は3万6797人。5歳以下の乳幼児が感染者の約9割を占める。1医療機関当たりでは11.72人で、全国41都府県で警報レベルとなる5人を超えた。1医療機関当たりの感染者数が多かった県は三重が27.56人、富山21.76人、静岡20.90人など。
厚労省や同研究所によると、手足口病に似ているヘルパンギーナも昨夏に続いて増加傾向だという。ヘルパンギーナも飛まつや接触によって感染が広がり、38~40度の高熱と喉に水疱(すいほう)ができるのが特徴だ。これら2つの感染症ともにアルコール消毒が効きにくい。新型コロナの感染予防と同じく手洗いや咳エチケットが有効という。
このほか、子どもの間で流行するA群溶血性レンサ球菌咽頭炎(溶連菌感染症)や、溶連菌が劇症型になり、突発的に発症して致死率が極めて高い恐ろしい劇症型溶血性レンサ球菌感染症も今年に入ってから増えている。
高齢者は急に衰弱し持病が悪化する恐れ
「今年は5月から暑さが続いたので体力を失っている高齢者は多い。そうした中で感染すると、高熱と喉の痛みが特徴なのでなかなか食事が取れなくなる。暑さと相まって急に衰弱して持病が悪化するケースが増える恐れがある」。循環器内科が専門の尾崎治夫・東京都医師会会長は7月16日に東京都内で開いた記者会見でこう懸念を示した。
気象庁によると、7月は「観測史上最も暑い7月」になった。同庁は8月、9月も猛暑が続き、10月も暑さが残ると予測している。熱中症による搬送者も急増し、高齢者が占める割合が多い。
この夏の新型コロナ感染者増について尾崎氏は「若い人は感染しても風邪ではないかと検査しない人がたくさんいる。感染力が強いと言われているKP.3株が8割を占めている。夏休みに入り、マスクをする人も減っている状況で感染者が増えると、いずれ高齢者にも(ウイルスが)入ってくる」と指摘した。
さらに新型コロナに対する公費支援が終わっていることについて「せめて感染者が増加する夏場だけでもいいので、自己負担が3000円とか5000円で済むように国や都にはお願いしたい」と述べた。公費支援終了に伴う「検査・診療控え」や「隠れ感染者」による感染拡大を心配する医療関係者や感染症専門家は多い。 内城喜貴/科学ジャーナリスト