3次元空間の中で「自己接触」しないで「クラインの壺」を作る方法はあるのか?その考え方が「4次元への入り口」だった!
宇宙はどんな形をしているのか? その謎に迫るために取り入れられているのが「トポロジー:位相幾何学」と呼ばれる数学です。このトポロジーの中でも、超弦理論との関係から近年注目されている「結び目理論」や、宇宙空間を考えるうえで重要になる「高次元幾何学」を中心に、この不思議な世界を紹介する新刊『宇宙が見える数学』。その中から、この記事では本書のテーマである「高次元の幾何学」から4次元の世界について考えていきます。以前の記事では、平面(2次元の図形)から「クラインの壺」を作る工作が「3次元空間」では「自己接触しない」で作ることはできないけれど、「4次元空間」ではできることを紹介しました。この記事では、皆さんと4次元の世界を見ながら、この工作をしていきたいと思います! 【図解】3次元空間の中の「クラインの壺」の考え方が「4次元」への入り口だった! *本記事は『宇宙が見える数学』(ブルーバックス)を再構成・再編集したものです。
クラインの壺と4次元空間
まず、以前の記事で紹介した「正方形から3次元空間にはめ込まれた『クラインの壺』の作り方」をおさらいします。 図1の左の正方形ABCDの向かい合う辺(辺ABとCD、辺ADとBC)の矢印の向きをそろえて「同一視する」(貼り合わせる)とできる図形が「クラインの壺」でした。このとき、最初の正方形ABCDは自由に引き延ばしたてもいいことに注意してください。頭を柔らかくして考えましょう。 この工作は3次元空間内では「自己接触(図形を動かした結果、その図形のある点が別の点に接触すること)」しないで作ることはできませんが、4次元空間内であれば「自己接触せず」にクラインの壺を作ることができるのでした。 ちなみに、図1の最終的にできた図形(右下)は、「クラインの壺を『3次元空間R3』(アールスリー:Rは二重線、3は肩付き)へはめこんだものです。
アニュラスから一部分を取り除いてみたら!
さきほどの図1の右の「クラインの壺」と似ていますが少し違う図を作ることにします。これは、図1の「3次元空間R3で自己接触したクラインの壺を作ったとき」と似た手順です。 まず、辺ABと辺DCを合わせたアニュラス(筒)を作り、その側面から「小さい円板」を取り除いたものを用意します。あとは同じ手順です(図2)。 この図の完成形(図2の下段右)は自己接触なしです。とりあえず、この図形を「クラインの壺―円板」(クラインの壺マイナス円板)と呼ぶことにします。 ここで、「ちょっと待った。これは3次元の図だ。4次元は関係ないでしょ!」と思った方、正しいです。取り除いた円板をちゃんと元に戻さないといけません。 しかし、「クラインの壺―円板」の側面の穴に円板を貼ろうとすると、3次元空間R3の中では、かならず自己接触します。ところが、4次元空間R4の中では、自己接触しないで、側面の穴に円板を貼ることができるのです。