門脇 麦「役を作るという感覚があまりない。多分、全部自分なんだと思います」
門脇 でもインバルはそういうことを簡単に飛び越えて、私のような平凡な想像力しかない人間を夢のような世界に連れてってくれるんです。私が初めて見たインバルの作品は、2013年の『100万回生きたねこ』だったんですが、とにかく驚いて。インバルマジックに満ちている舞台を観ている時間は本当に幸せでした。 樋口 あれを舞台化ですか! どうやって!? 門脇 でしょ! 見たら、その1000倍ぐらいのリアクションになると思います。えっ! こうなるの!? みたいな。インバルと一緒に仕事した人はみんな魔法にかかってしまうから、稽古は大変で混沌としているけど、もう1回インバルと仕事したいと思うんですよね。だから『未来少年コナン』も今からものすごく楽しみにしています。 樋口 うわ~、絶対に見たくなってきました(笑)。
「『未来少年コナン』はいくらでも広げられる作品」(門脇)
門脇 私は、漫画家や映画監督のような物事を突き詰めた人って、みんな分子や粒子、次元の話にたどり着くと思っていて。『未来少年コナン』は直接そういう話はしてないけれど、戦争と震災が描かれている作品だから津波が来たり、地震が起きたりする。それも結局は分子と粒子の話だし、人間よりもいち早く察知するのが虫とか鳥だったりするわけです。 インバルもそういう観点で世界を見ているんだろうなって思う瞬間が多々あって、だから今作とも絶対マッチすると思いますし、それがインバルの中のイメージを通すことでどう見えてくるのかが楽しみですね。 樋口 なるほど~。僕はつかこうへいさんという舞台人が大好きで、本もたくさん読んでいますが、今の話を聞いて「舞台は自由である」っていう、つかさんの話を思い出しました。映画やドラマで、出演者がセットやロケ場所で「海がある」って言ったら、もうそこは海になって観客にもすぐに海が見えるんだと。 門脇 まさに、そういうことなんだと思います。
樋口 自由さを最大限にまで広げてくれるんですね。 門脇 はい。『未来少年コナン』はいくらでも広げられる作品だと思います。逆にどこまででもできるから、どこまでやるかという選択が必要になってくると思います。しかもそれが、歌って踊る音楽劇になるのも楽しみですね。 樋口 舞台は、普段の映画やドラマとはまた全然違いますよね。自分の演じ方とか、心がけていることなどはありますか。 門脇 声を大きく出すこと(笑)。でも映像も舞台も、気持ち的には何も変わらないですね。言うなら身体面。360度見られているから、見せるものはしっかり提示していかないと(観客には)見えてこないなと思います。例えば映像なら、大事なセリフはカットバックで寄ってくれるけど、舞台は自分で見せ場を作っていく作業が必要ですよね。 樋口 舞台は毎回イチからやるわけですから、集中力の持続も大変ですよね。見る人からすればそれ1回きりですし。体調の維持も大変だろうなと、いち観客としては思います。 門脇 確かに体調の維持が一番大変かもしれないですね。喉の管理とか。 樋口 門脇さんは料理が好きだったり、魚釣りも好きだったりされるそうですが、そういうのが全部俳優業の栄養として取り入れているのかな? と思いました。 門脇 そのために料理をするとか、釣りをするわけではないですが、何かをやれば絶対どこかに影響すると思うので、自然と栄養になっているのかもしれないですね。