JRAの努力が実った“本物”のジャパンC参戦
ドウデュースが制したジャパンC。東京競馬場の指定席は13・1倍(S指定席)~最高29・7倍(5階C)のプラチナチケットだった。ジャパンCの現地取材は今回で10度目だが、これほどの盛り上がりを感じたことはない。 ジャパンCは81年に創設された国内最初の国際G1。当時の1着本賞金はダービー、有馬記念などと並び、JRA最高額の6500万円だった。海外レースの賞金増加、香港G1への流出馬の対策もあって、増額が繰り返され、今年は5億円。ただ、第1回のメアジードーツから14勝を挙げている外国馬だが、近年は19年連続で日本馬が勝利。18年にはアーモンドアイが2分20秒6の驚異的なレコードを出すなど、外国馬が参戦したがらない理由もうなずける。 19年は創設後初の外国馬出走なし、20、23年が1頭。世界を迎え撃つ-、そんな言葉からほど遠く、誘致はJRAが抱える課題でもあった。その対策は…、JRA定例会見では記者から毎度のように質問が飛んだ。 輸入検疫制度を変更し、22年のジャパンCからは競馬学校の輸入検疫を経ず、東京競馬場の国際厩舎へ直接入厩が可能になった。また、ジャパンC出走の帯同馬(外国調教馬)に対し、キャピタルS以外にジャパンC実施週の東京で計4競走を開放するなど策が練られた。 今年はオーギュストロダン、ゴリアット、ファンタスティックムーンと世界トップクラスが参戦。褒賞金こと「ボーナスシステム」の影響も大きい。対象レースの勝利馬がジャパンCを勝てば、1着賞金5億円にボーナス300万ドル(約4億5000万円)がプラスされる。今年の出走馬3頭は全て該当馬だ。1着なら9億5000万円。2着なら賞金2億円+120万ドル(1億8千万円)、3着なら賞金1億3000万円+75万ドル(約1億1250万円)で、4着以下でも20万ドル(約3000万円)が手に入るシステムだ。 マイルCSに出走したチャリンもJRAが誘致に成功した例。結果は5着だったが、対象レース3勝馬で1着なら70万ドル(1億円)が加算されたとあって、本気の参戦だった。 JRA国際部の肥塚裕之国際渉外課長は「ボーナスシステムも効果があります。国際厩舎については、安田記念を勝ったロマンチックウォリアー陣営も喜んでいました。また、今回のアイルランド馬はイギリス駐在員事務所、フランス馬とドイツ馬はパリ事務所の活動や努力が実ったと思います」と説明する。 昨年のジャパンCが『23年ロンジンワールドベストレース』を受賞。また、8月27日に開催された27カ国、約500人の関係者が参加したアジア競馬会議札幌大会の影響もあったと感じる。 「海外から3頭も参戦してくれて、そのおかげで盛り上がったと思う。今後も一層、世界をリードするレースになればうれしい」。こう話したのはドウデュースで制した武豊。やはり、日本馬が海外の強い馬と戦ってこそ、ジャパンCは盛り上がる。改めてそう感じた週末だった。(デイリースポーツ・井上達也)