意思に反して身体が動き、声が出る<トゥレット症>と小3で診断された男性「見当違いな診断を受けたまま大人になった人も。発見が遅れがちな理由は…」
自分の意思に反して身体が動いてしまったり、声が出てしまったりする症状が持続する「トゥレット症」という病気をご存知でしょうか。重度訪問介護を専門とする会社で働く酒井隆成さんは、トゥレット症の当事者として、YouTubeや講演会で積極的に啓発活動に取り組んでいます。今回は、酒井さんのエッセイ『トゥレット症の僕が「世界一幸せ」と胸を張れる理由』から、一部を抜粋してご紹介します。 【書影】トゥレット症当事者が、パワフルな半生と啓発への想い、そして人生を楽しんできた秘訣を語る。酒井隆成『トゥレット症の僕が「世界一幸せ」と胸を張れる理由』 * * * * * * * ◆トゥレット症だと判明した日 トゥレット症だと正式な診断を受けたのは、小学3年生のときです。 突然、首回りのリンパが腫れて高熱を出した僕は、2週間ほど人生ではじめての入院をすることになりました。 その入院先で僕を診てくれた小児科の先生が、おかしな歩き方をする僕の様子に違和感を抱き、別途診察を受けることになったのです。 そして、診断の末、僕にはチック症があることが判明します。 このとき、かなり早い段階で医師の診断を受けられたことは、実はすごく運が良いことでした。 なぜなら、日本でチックを診ることができるお医者さんは少数派で、トゥレット症の当事者は幼少期のチック症を見過ごされがちだからです。 さらに、現在ではそんな誤解は少しずつ減っていると思いますが、昔は「チック症が出るのは、親のしつけが悪いせいだ」との偏見も根強かったのです。 見当違いな診断を受けて、特に具体的な治療もされずに大人になった人も少なくありません。
◆発見が遅れる要因 また、トゥレット症専門の診療科がない点も、発見が遅れる要因のひとつかもしれません。 僕自身も、チックの症状で困っている人から、「何科を受診すればよいのですか」とよく質問されるのですが、「科目にこだわらず、“診られる”お医者さんを探してください」としか答えられません。 現在は、以前よりもチックの存在が一般的に知られるようになって、診療できるお医者さんの数も増えているとは聞いているのですが、それでもまだまだ治療できる専門医は足りていない印象です。 そう考えると、チック以外の症状で入院したのに、たまたまチックの診察ができるお医者さんに出会えたことは、本当にラッキーだったと思います。 ちなみに、そのときの先生は現在も小児科の専門医ではありますが、僕が成人したいまでも主治医として診察を続けてくれています。
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