どうなるエネルギー基本計画 気候政策シンクタンク代表が指摘する「危機感のなさ」
国のエネルギー政策の方向性を決める「第7次エネルギー基本計画」の策定に向けた議論が大詰めを迎えています。 将来の電源構成の割合を示すなど日本の脱炭素の行方を左右する計画ですが、抜本的な気候変動対策を求める環境系団体などからはこれまでの議論の内容やプロセスに対して疑問の声が上がっています。気候政策シンクタンク「クライメート・インテグレート」代表理事の平田仁子氏に話を聞きました。(聞き手 ライター/編集者・小泉耕平) ◇平田仁子(ひらた・きみこ) 1970年、熊本市生まれ。出版社を経て米環境NGOのClimate Instituteで活動。帰国後はNPO法人「気候ネットワーク」に勤務し、2021年「ゴールドマン環境賞」を受賞。2022年にClimate Integrate(クライメート・インテグレート)を設立し、ファクトに基づく情報提供や、各ステークホルダーの脱炭素への取り組み支援をおこなう。千葉商科大学大学院客員准教授。博士(社会科学)。
先進国で廃止が進む石炭火力を「存続前提」で議論
──現在、3年ごとに見直されるエネルギー基本計画の議論が、資源エネルギー庁の総合資源エネルギー調査会・基本政策分科会を中心に進んでいます。2024年度内の策定を目指し、12月中にも素案が発表される見通しです。ここまでの議論には、どんな感想を持っていますか。 「脱炭素」という言葉は踊っていても、実際はここ20~30年間続いてきた政策の延長線で議論が進んでいることに危惧を覚えています。 日本として気候変動問題にどう向き合うのかについて詰められていないまま議論が始まってしまったことが、そもそもの問題だと考えています。 地球の平均気温の上昇を産業革命前の水準から1.5℃に抑えるという目標は、達成できなければ世界全体で既存の産業や経済が成り立たなくなるほどのダメージになることが分かっている。事態は緊急を要するのに、日本ではそうした危機感が共有されていません。 ──そう感じられるのは、どんな部分ですか。 象徴的なのは、火力発電に対する姿勢です。石炭や天然ガスといった火力発電は温室効果ガスを排出する最大の要因で、中でも一番の排出源である石炭火力をいち早く減らしていくことが脱炭素を進める上では重要です。 イギリスは、今年9月に最後の石炭火力発電所の運転を停止しました。すでにOECD(経済協力開発機構)加盟国の3分の1が、発電における「脱石炭」を実現しています。残りの国の多くも2030年、またはそれ以降に廃止年を定めているのに、日本はいまだに廃止予定を決めていません。今回の議論も、石炭火力発電については存続を前提としたものになっています。