石油でも、天然ガスでもない…追い詰められたロシア・プーチンが"採掘"に躍起になっている"第三の収入源"
■ビットコインの活用を呼び掛けるロシアのプーチン大統領 ロシアのウラジーミル・プーチン大統領が代表的な暗号資産であるビットコインに活路を見出そうとしている。プーチン大統領は12月4日、モスクワで開催された国際投資会議の場で、外貨準備を米ドルやユーロといった国際通貨(ハードカレンシー)で保有することへの疑問を投げかけ、代わりにビットコインの活用を内外に呼びかけた。 【図表】ロシアが保有していた外貨の構成 ロシアは2022年2月にウクライナに侵攻したことで、米欧日から厳しい経済・金融制裁を科された。その際、ロシアが米欧日の中銀に開設していた口座が凍結され、預託していた外貨資産へのアクセスを失った。そのためロシアは、それまで積み上げて来た外貨準備資産の6割近くを、事実上、失うことになったという経緯がある(図表1)。 そもそも、外貨準備とは何か。外貨準備とは、各国政府が保有する外貨建て金融資産を意味する。そのうち、いわゆる為替介入に用いることが出来る満期の短い金融資金は、全体の2割程度ではないか。残りの多くは、年限の長い長期の外貨建て金融資産となる。新興国ほど外貨準備は、政府系ファンド(SWF)としての意味合いを強く有している。 2014年のクリミア侵攻で米欧との関係が悪化して以来、ロシアは外貨準備の多様化を進めてきたが、米ドル建て資産をユーロやポンドといった他のハードカレンシーに振り替えたに過ぎなかった。しかし米欧が協力してロシアの外貨準備へのアクセスを遮断したため、外貨準備を多様化した甲斐もなく、国富を実質的に没収されたわけだ。
ビットコインなら米欧の行政権が及ばないとプーチン大統領は考えているのだろう。しかしあらゆる金融資産は、そもそもいつでもどこでもだれでもが使えるハードカレンシーに換金できなければ価値を持たない。そのため紙幣ならともかく、銀行口座を通じた決済であれば必ずハードカレンシーへの換金が記録され、米欧の行政権が及ぶことになる。 ■二次制裁を通じて管理される可能性 近年、米国は、いわゆる二次制裁を通じて、世界的に行政権を行使している。米ドルを利用する場合、米国の金融市場に情報が必ず残る。ゆえに米国は、制裁対象に定めた相手と取引を行った相手方の事業者を米国の金融市場から締め出すというペナルティを科すことを通じて、制裁対象が米ドルを利用することを抑止するわけだ。 世界のあらゆる事業者が、自国の金融機関を通じて米国の金融市場とつながっている。そのため、大手の事業者ほど、米国の金融市場から締め出された場合に受けるダメージは大きくなる。中国の金融機関でさえ、米国の二次制裁を警戒してロシアとの取引を停止した。以来、中ロの貿易の主にステーブルコイン「テザー」で実施されているようだ。 現在、米欧を中心に、ビットコインを含む暗号資産に関する規制の整備が進められている。暗号資産が健全な金融資産としての道を歩む上で、各国政府による管理下に入ることは免れないところだろう。暗号資産による決済や送金に関しても、マネロン(資金洗浄)などの犯罪防止の観点から、各国政府が目を光らせている。 言い換えれば、米欧の意に背く取引を行った事業者に対して、何らかの制裁が科される可能性が高まっている。例えば、米国の事業者と付き合いがある第三国の事業者が、暗号資産を用いてロシアの事業者と取引を行ったと判断された場合、その事業者と米国の事業者との取引を禁じるという措置が取られるかもしれない。つまり二次制裁の応用だ。 米国のトランプ次期大統領はビットコインを高く評価しており、米政府が抱える債務を圧縮する手段に使えると考えているようだ。些か荒唐無稽だが、トランプ次期大統領がどうであろうと、米国のみならず、世界各国がかねてより暗号資産への規制を強化しようとしてきたところである。そのような暗号資産をロシアが自由に使えるだろうか。 ■暗号資産に対する警戒が強い中国 他方で、ロシアの盟友とみなされがちな中国は、暗号資産の利用に対する警戒を強めている。公には国内での暗号資産の取引を禁止しているが、中国の国民は第三国の事業者を通じて暗号資産を取引できるようだ。とはいえ、これはあくまで小口取引の話だ。国外から海外への資本逃避を警戒する中国にとって、暗号資産の大口取引は看過し難い。