じつは、多くの人が「生命のシステムは1種類」だけと思っている…「地球外生命」の存在をも左右しかねない「驚愕の生命観」
著者に聞く第11回…「生命の定義」が変われば、地球外生命体への見方も変わる…アストロバイオロジーのパイオニアが語る、驚きの生命観 【画像】2タイプのアミノ酸…左巻きと右巻きがこれ 『生命と非生命のあいだ 地球で「奇跡」は起きたのか』の著者、小林 憲正さん 地球外生命の存在の可否は、古代より人類の興味関心の的である。 しかし、何をもってして「生命」とするのか「非生命」とするのだろうか。なんと、その定義によって、地球外生命の存在確率も可能性が飛躍的に高くなる……。そんな衝撃的な説を語るのは、アストロバイオロジーを専門とする小林憲正氏(横浜国立大学名誉教授)である。 「生命」と「非生命」をどのように捉えるのか、また、小林氏が地球生命誕生の場と提唱する「がらくたワールド」とは何か、話を聞いた。 ※本記事末尾でインタビュー動画へご案内しております。
地球外生命体はいるのか
地球外生命体は、いわゆる「観測可能な宇宙」にいるのでしょうか。 小林憲正氏(以下、小林):私も含め、アストロバイオロジーの研究をしている研究者は、長らく「観測可能な宇宙」の中に地球外生命体がいるか否か、実験や議論を重ねてきました。 観測可能な宇宙には、10²³個ほどの星があります。宇宙空間に膨大に存在する星の中で、太陽もその周りを公転している地球も、ありふれた星に過ぎません。 特別ではない太陽系の珍しくもない衛星である地球に生命が存在しているということは、広く見渡せば、宇宙のどこかに複数の地球外生命が存在していても不思議ではないと思います。 東京大学大学院教授の戸谷友則氏は「観測可能な宇宙に地球外生命が存在している可能性は極めて低い」「ただし観測可能な宇宙の外まで考慮すると地球外生命が存在する可能性は高い」という説を発表しています。 小林:「観測可能な宇宙に生命が存在しているか」という問題に対する考え方は、研究者によってまちまちです。 生命の起源をどう定義するか、地球外生命をどのようなタイプと捉えるか、という点について、どういった立場をとるのかにも依存します。 私たちが知っている生命システムは、タンパク質を触媒として代謝を行い、DNAを用いて複製をする、地球生命のシステムのみです。ですから、地球外生命も同様の生命システムを有しているのではないかと考えがちです。どうしても地球以外の星でもDNAとタンパク質を用いる生命が誕生するシナリオを描きたくなってしまいます。 戸谷説では「地球外生命の生命システムは、地球生命のそれと類似している」という前提にのっとっています。生命システムを1種類に限定しているため「観測可能な宇宙に地球外生命が存在している可能性が低い」と言いたくなってしまう。これはこれで、仕方がないことだと思います。 けれども、私は地球生命とは異なった方法で代謝や複製を行う生命がいてもいいのではないかと思っています。そう考えると、観測可能な宇宙に地球外生命が存在している可能性は、格段に高くなるのです。 ※参考動画:戸谷友則氏のインタビュー動画はこちら。