森保ジャパンはドイツでのエクアドル戦で何を得たのか?
大迫が不在の場合の戦い方として、相手を畏怖させるスピードで何度も、かつ執拗にプレスをかけるFW前田大然(24、セルティック)を起用する戦い方にもめどがついた。中盤の選手とのコンビネーションを含めて、古橋の生かし方を構築できないまま、カタールワールドカップ代表発表前の最後の試合も終えてしまった。 エクアドル戦でトップ下を務めた「10番」の南野も古橋を孤立させた。 ボールを受けても、前線へパスを出すどころかキープもままならない。前半20分には味方からの縦パスを受けようと自陣まで下がってきながら、田中へ落としたパスが弱く、かつコースもずれる。すかさずボールを奪われ、発動されたショートカウンターは、相手のシュートがゴールの枠をとらえられずに事なきをえた。 代表に合流する直前のリーグアンで、ようやくモナコ移籍後の初ゴールを決めた。しかし、シーズン序盤から不振が続き、フランスのメディアやファン・サポーターから酷評されてきた日々で精彩を欠くだけでなく、自信も失ってしまったのか。 「自分の特徴は中でプレーすること。そうしたところを生かしながら、味方との距離感であるとか、狭いエリアでターンして前を向くとか、そういうプレーができれば」 6月シリーズでこう語っていた南野は、不得手としてきた左ウイングから解放され、待望のトップ下でのプレー機会を与えられた。しかし、存在感を放てないまま後半22分にベンチへ下がった。交代でピッチに立った鎌田を頂点にすえるトップ下の序列は、現状では久保の後塵をも拝する形になっている可能性すら出てきた。 森保監督はカタールでの戦いをにらみ、アメリカ戦とエクアドル戦の先発メンバー全員を入れ替えた。グループリーグではドイツ、コスタリカ、スペイン各代表とすべて中3日で戦う。特にドイツ戦では、心身ともにかなりの消耗を強いられる。 ゆえにコスタリカとの第2戦では、選手をある程度入れ替えてもチーム全体の戦力が落ちない戦い方が求められる。アメリカ戦で初戦に臨む11人のめどがついたからこそ、エクアドル戦でターンオーバー構想を具現化させるべく動いた。 果たして、収穫となったシュミットはGK権田修一(33、清水エスパルス)とどちらを起用するのか、まさに嬉しい悲鳴を指揮官にあげさせたはずだ。しかし、ダブルボランチの一角、1トップ、トップ下であらためて不安が顔をのぞかせた。 それでも今遠征の活動を終える選手たちへ、あるいは治療やコンディション調整にあたっている候補選手たちへ、指揮官はこんな言葉を発信した。 「まずは所属クラブを勝たせるように、存在感を放ってもらいたい。所属チームでの活躍が代表の強化につながるので、また日常を頑張ってほしいと思います」 南野は森保ジャパンが旗揚げされた2018年9月から、柴崎は同10月から、そして古橋は2019年11月から継続的に招集されてきた。これまでの積み重ねに森保監督の性格を踏まえれば、カタール行きは確定といっていいが、同時に不安も抱えたままとなる。注目のワールドカップ代表メンバー26人は、早ければ10月上旬にも発表される。 (文責・藤江直人/スポーツライター)