映画が伝える50年前の「あさま山荘事件」今なお国際手配中の容疑者も
1972(昭和47)年2月、長野県は軽井沢町にある保養所・浅間山荘に過激派組織「連合赤軍」のメンバー5人が管理人の妻を人質にとって10日間に渡り立てこもった「あさま山荘事件」は19日、発生から50年を迎えた。テレビ報道の全盛時代、連日刻一刻と報じられる事件の様子は国民的注目を集め、NHKと民放を合わせた視聴率は89.7%に達した。日本の映画でも同事件をモチーフにしたもの、あるいは同事件に至るまでの過程を描いたものが見られる。
役所広司主演で警察側から描いた「突入せよ!あさま山荘事件」
2002年に公開された役所広司主演の映画「突入せよ!あさま山荘事件」(原田眞人監督)は事件当時幕僚団として現地に派遣された佐々淳行氏の原作を実写映画化したもので、連合赤軍と警察の戦いというより警視庁と長野県警の対立など警察内部の攻防が描かれている。膠着状態の中、詰めかけている報道陣や野次馬、極寒の現場の状況などリアリティーをもって作られているがドキュメンタリーではなくあくまでエンターテインメント映画なので人間描写などフィクショナルな部分もある。警察側からの視点であさま山荘事件を捉えた作品となっており、連合赤軍についての描写はあくまで山荘に立てこもった犯人としてのみの存在に限定され、実際、犯人が登場するシーンはごくわずかだ。 同作は「たそがれ清兵衛」が多くの部門で最優秀賞を受賞した第26回日本アカデミー賞において、作品、監督、脚本、主演男優、撮影、照明、美術、録音、編集の各部門で優秀賞に輝いている。
連合赤軍側から描いた「実録・連合赤軍 あさま山荘への道程」
対照的に2008年公開の映画「実録・連合赤軍 あさま山荘への道程」(若松孝二監督)はタイトル通りあさま山荘に至るまでの過程に多くの時間を割き、連合赤軍側の視点から描いていている。同作もドキュメンタリー映画ではないものの「実録」と銘打っているだけに3時間10分という長い尺で凄惨な山岳ベース事件を含め連合赤軍の軌跡を詳細に描写した。若松監督が私費2億円を投じて作った意欲作で2008年ベルリン国際映画祭で国際芸術映画評論連盟賞と最優秀アジア映画賞を同時受賞。井浦新(当時はARATA)、坂井真紀らが出演し、70年代の学生運動の高まりをはじめ当時の若者たちが「何を考えどのように連合赤軍に参加していったのか」「なぜあさま山荘事件が起きたのか」ということが伝わる内容となっている。 また、あさま山荘事件についてはほぼふれていないが、連合赤軍関連の事件を扱った映画としては2001年公開の「光の雨」(高橋伴明監督)も外せない。劇中劇という形で連合赤軍が起こした凄惨な事件を描いている。立松和平氏の小説「光の雨」をもとにして、そのまま映画化するのではなく原作を映画化する模様を描いた。同作の映画化が決まったという設定で、山岳ベース事件や印旛沼事件といった凄惨な事件を劇中劇という形にして伝えている。映画作りに参加する若者たちそれぞれの戸惑いや葛藤などが浮かび上がる。大杉漣、萩原聖人、塩見三省、高橋かおり、山本太郎、裕木奈江、池内万作らキャストも多彩だ。