食料から燃料、温暖化防止まで……「ミドリムシ」の可能性とは
いすゞ自動車がミドリムシ(学名:ユーグレナ)由来のバイオディーゼル燃料を使ったシャトルバスの運行を7月からスタートさせました。運行区間は湘南台~同社藤沢工場間で、1日22往復。これは、同社とバイオベンチャーの「ユーグレナ」がミドリムシから次世代バイオディーゼル燃料の実用化を目指した共同研究プロジェクトの一環です。 近年、食料やバイオ燃料、環境問題解決の一助として期待が高まるミドリムシ。一体どういう生物で、今現在どんな取り組みが行われているのでしょうか。
0.05ミリの生物が秘める可能性
ミドリムシは体長わずか0.05ミリの小さな微生物で、藻の一種です。動物と植物の両方の特徴を兼ね備え、動物のように細胞を変形させて移動したり、植物のように光合成を行い体内に栄養分を蓄えたりできます。 最初に着目されたのは、その豊富な栄養素でした。具体的には、ビタミンCや葉酸といった植物性由来、ビタミンB1やDHAといった動物性由来と、実に59種類の栄養素を含んでいるのです。ミドリムシの粉末を利用したサプリメントやお菓子、調味料、ドリンク、ハンバーガー、米、ラーメンなど、関連商品は続々と登場しています。 さらに、ミドリムシは体内の葉緑素で光合成を行い成長します。その時必要なのが、太陽光と水、二酸化炭素。ミドリムシは普通の植物に比べ、特に二酸化炭素を吸収する能力に優れているので、地球温暖化対策に有望視されています。 また、光合成時に体内に油脂を生成するので、それを抽出・精製し、バイオ燃料として利用できます。飛行機を飛ばすジェット燃料や長距離輸送車に使われるディーゼル燃料、自動車などのガソリン燃料など、それぞれの生産において水平展開が期待されています。
バイオ燃料や化粧品などの新ビジネス
ミドリムシを活用した新しいビジネスのなかでも市場規模が最も大きいのが、石油代替燃料の生産です。先に触れたいすゞ自動車とのバイオディーゼル燃料以外にも、JX日鉱日石エネルギー・日立製作所・ユーグレナ社は航空機向けジェット燃料を開発中。2018年の技術確立、2020年の事業化を目指しています。 受け入れ側の航空会社各社もバイオ燃料の導入には積極的な姿勢を表明しています。日本航空はボーイング社、プラット・アンド・ホイットニー社などと共同で、2009年に世界で初めてバイオジェット燃料を使ったデモンストレーション飛行を実施。この時は、植物の「カメリナ」「ジャトロファ」「藻」から精製した3種の混合バイオジェット燃料が使用されました。全日本航空も2012年に使用済みの植物性食用油を原料にしたバイオ燃料を混合した燃料を用いて、日本からアメリカへの太平洋横断フライトを行いました。背景には二酸化炭素排出抑制の動きがあり、世界的にもバイオ燃料の利用拡大が見込まれています。 ほかにも、バイオプラスチックの実用化に向けた研究や水質改善、化粧品など、ミドリムシの活躍が期待されるフィールドは多岐にわたります。