自然災害7倍時代に備える! 小さな畑から地球を変えるリジェネラティブ農業
地球をとりまく様々な環境が危機的状況といわれて久しいですが、わたしたち個人がエコバッグを使ったり節電する以外でもう一歩踏み出した行動をするために何が必要なのでしょうか。 今回は、文化人類学者、自然菜園コンサルタント、企業家といった、それぞれのフィールドで活躍中の3人の対談からヒントを見出していきます。
自然災害の経験確率が最大7倍になった現代。その要因となっているものは?
環境活動家であり、文化人類学者の辻信一さんは、現在の子どもたちは、祖父母の世代と比較して自然災害を経験する確率が最大7倍になる可能性がある(※)状況であり、すでに日本だけでなく世界中「自然災害の多さ」に異変を感じ始めていると指摘し、現代社会が抱えている問題の根本について語りました。 (※)ベルギー・ブリュッセル自由大などの国際研究チームが2021年9月末に米科学誌「サイエンス」に掲載した研究結果より【https://www.nikkei.com/article/DGXZQOCB15D9G0V11C21A0000000/】
辻 わたしたちはこの数十年、未来ばかりを追いかけてきました。今ここにある世界は本当に住みたい世界ですか? 災害は増え、気候の変化だけとっても危機的状況にある地球に対して、わたしたちができることはなんでしょうか。 例えば、気候変動の一番の要因といわれている二酸化炭素問題ですが、簡単にいえば、わたしたちが放出している炭素が、地球が吸収できる量を大幅に上回ってしまったことが原因です。 そして、炭素の約50%(※)が食品の生産現場から食卓までの全過程から放出されています。 世界的に、近代農業、畜産は森や木々を伐採して大規模に切り開くことで発展してきました。これからは、食料を生み出す農業、畜産...全体をみなおしていくことがとても大切なポイントとなります。 農と食、そしてその流通のあり方を大きく変えれば、気候変動に歯止めをかけられるかもしれないのです。 人類の未来は、これまでの工業的で化学的な大量生産の農業や、食品を長距離輸送する食のグローバルシステムから、小規模でリジェネラティブかつローカルな農と食への転換にかかっている、とぼくは考えています。 ※Local Futures 2021年に公表の動画より 【https://www.localfutures.org/】 とはいえ、増え続ける人口や、それぞれの生活を維持するためには「生産効率」や「生産量」は現実的に考えなければいけない要素です。一見、八方ふさがりにみえるこの状況に対し、辻さんは自然が持っている再生能力に着目したリジェネラティブ農業について触れていきます。 辻 今、世界中で進行している大きな意識改革のひとつとして「リジェネレーション」という考え方があります。これは、自然が持っている自己再生能力に着目し、それに沿った生き方をしようという考え方です。 自然は、再生、循環、更新する力をもともと持っています。わたしたちは、その自然が持っている力を引き出していく手助けをすることで環境改善に貢献できるのです。 このリジェネレーションの考え方を農業に活かしたのがリジェネラティブ農業です。