何が優勝したヤクルトとあと一歩で泣いた阪神の明暗を分けたのか…高津監督と矢野監督のマネジメント力の差
ヤクルトが26日、横浜スタジアムで行われた横浜DeNA戦に5-1で逆転勝利をおさめ2位の阪神が甲子園で中日に0-4で敗れたため6年ぶり8度目の優勝が決定した。ヤクルトの高津臣吾監督は、先発要員の高橋奎二を中継ぎ起用して2イニングを任せる優勝用のスペシャル采配。一方、阪神の矢野燿大監督は先発の青柳晃洋を2回で下げたが、先発要員をベンチ入りさせるなどの特別プランは用意しておらずいつも通りの用兵で失点を重ねた。両チームの指揮官のマネジメント力の差を象徴するような運命の1日となった。
「2年連続最下位の悔しさを持って」
横浜DeNAのフロントが粋な計らいをした。 試合はヤクルトが5-1で勝った。だが、15分遅れで甲子園で始まったマジック対象チームの阪神の試合がまだ終わっていない。横浜DeNAは本拠地最終戦のセレモニーがあったが、それを遅らせて、スコアボードの巨大ビジョンに阪神対中日の中継映像を9回表の途中から音声付きで流したのだ。 ヤクルトの高津監督以下、全メンバーが三塁ベンチにスタンバイして1球、1球に拍手を送りながら試合を見守る。阪神の最後の打者、大山がショートゴロを打った瞬間、フライングして真っ先に無人のマウンドに向かって両手を上げて駆けだしたのが、39歳の野手最年長の青木だった。在籍12年にして初めて味わう優勝の瞬間にブレーキをかけることができなかった。 歓喜の輪ができる。静かにその輪に向かって歩を進めた高津監督は泣いていた。就任2年目。最下位チームを引き受け、監督1年目も最下位。今春の沖縄キャンプイン前に「2年連続最下位の悔しさを持って今シーズンに入っていこう」と語った指揮官が5度宙に舞った。田口が背番号22にあわせ22回を提案したが、高津監督が控えめに5回を要望したそうだ。 新型コロナによる人数制限があり、スワローズファンがハマスタを占拠したわけでも2分したわけでもなかったが、温かい拍手に包まれる中、高津監督が三塁側のベンチ前で優勝インタビューを行った。 「開幕してからここまでたくさん色々なことがあったので、いまホッとした気分と、本当に選手が一生懸命頑張ってくれた成果だと。気持ち良く胴上げしてもらいました」 高津監督は次から次へと勝負手を打った。 2回に同点とし、3回にサンタナ、中村の連続タイムリー二塁打で4点のリードを奪うと5回に1失点で踏ん張っていた高梨から石山にスイッチ。二死一塁で2打席連続二塁打の森を左打席に迎えたところで、今度は左腕の田口をぶつけた。盤石の小刻み継投で結果は投ゴロ。そして6回からは、なんと先発要員の高橋。場内がざわめく。まさにV用のスペシャル用兵である。 高橋は走者を出しながらも無失点に抑え、回跨ぎで2イニング目に突入した。7回二死から桑原の平凡なファーストフライをオスナが落球。不穏な空気が流れたが続く森をスイングアウトに終わらせピンチを脱した。8回清水、9回マクガフの勝利方程式につないでの鮮やかな“V王手“で虎の結果を待った。