なぜ初球にバスターのサイン?阪神の奇跡Vが遠のく首位攻防戦ドローに見えた矢野監督と高津監督の采配力の違い
阪神が20日、甲子園で行われたヤクルト戦に0-0で引き分け、ヤクルトのVマジックが「3」に減った。ジョー・ガンケル(29)は8回途中、高橋奎二(24)は7回まで無失点に抑える投手戦となったが、阪神は5回無死一、二塁の好機に「7番・レフト」で先発出場した育成出身の小野寺暖(23)にバスターを仕掛けさせて失敗したことが響いた。阪神の奇跡のVの可能性は遠のき、ヤクルトは最短で22日の広島戦で優勝が決まることになった。
高津監督は糸原を申告敬遠せず勝負を選ぶ
ヤクルトベンチは動じなかった。0-0で迎えた9回二死二塁。打席に糸原を迎えて高津監督は、守護神のマクガフに勝負させた。4試合連続ヒットの糸原は、この日も2安打とバットが振れていた。1本出ればゲームが終わる。次打者がチャンスでのバッティングに粗さのある大山だったことを考えれば、糸原を申告敬遠で歩かせ大山勝負を選んでもおかしくなかった。 単打狙いの糸原は懸命にボールに食らいいつきファウルで4球粘った。だが、フルカウントから最後は見送ればボールの外角高めの153キロのストレートを打ち上げてゲームセット。サヨナラのチャンスを生かすことができなかった。マジック対象チームとの直接対決の場合は、引き分けでもマジックが減る。前日の圧勝で目の前の胴上げは回避していた阪神にとっては負けに等しい引き分け。矢野監督はテレビの共同インタビューに淡々と答えた。 「うちの立場は勝たないと状況的に厳しくなるのはわかっている。全員でなんとか精一杯戦った結果。これは代えられない。受け止めて残り試合をやるしかない」 昨年まで阪神で7年間コーチを務めた評論家の高代延博氏は、「ヤクルトの高津監督の投手心理を考えた強気采配の勝利」という見解を示した。 「9回一死二塁の場面。日本人投手であれば、糸原を申告敬遠で大山勝負の選択肢があったのかもしれない。だが、外国人選手は、こういう場面で逃げることを嫌う。四球を与えたあとの次の勝負に影響を及ぼす。そのあたりの投手心理をメジャー経験もある高津監督はわかっていて糸原と勝負させたのだろう。ベンチの強気とマクガフの強気が合致した。しかも、中村は追い込んでからはストライクゾーンで勝負しないように細心の注意を払っていた」 一方で対照的に阪神ベンチには強気を履き違えた“迷走采配“があった。