【ABC特集】“余命3ヵ月”宣告された男性と家族が望んだ形 我が家で過ごした390日 患者の思い支える訪問診療
(寺嶋医師)「体調どうですか?」「顔色はよさそうやね」 81歳の吉永祇子(ひろこ)さん。パーキンソン病が進行し、思うように体を動かすことができないといいます。 いまは、胃に直接、栄養を注入するなど、80歳になる夫の喬士(たかし)さんが介護しています。 (寺嶋先生)「胃ろうの所どうですか?」 (看護師)「傷自体、問題なくきれいです」 これまでは通院を続けてきましたが、経済的な理由などから、1年半前から自宅で、訪問診療を受けています。
介護タクシーを呼ばなければ、寝たきりになっている祇子さんは病院に行くことができません。 (喬士さん)「先生に来てもらって本当に助かります」 「決まってないから人の寿命って。それだけ長くみておかないといけないと、ぼくは思っているから。それだけ余裕を持っておかないと。みんなこの年代の人は思っているんじゃないでしょうか。お金は貯めている分しか残っていないから・・・」 喬士さんはできるだけ、自宅での介護を続けたいと言います。 (寺嶋医師)「病状が進行していく中で、自宅でどういう形で過ごすか、みなさん模索したり工夫しながら療養されています」
6月下旬、1年前から訪問診療を始めた男性がいます。 (寺嶋医師)「どうですか、調子は?」 (橋本さん)「あんまりよくない」 橋本泰二さん、75歳。去年3月、体の筋肉が徐々に動かせなくなる難病「ALS」=筋萎縮性側索硬化症と診断されました。医師から“余命3ヵ月”と告げられましたが、すでに1年以上が経ちました。 (妻・滋子さん)「『(余命)3ヵ月』と言われていたんです。寺嶋先生が『僕がすぐに駆けつけます。最後のことまでしっかりします』と言ってくれました。主人も先生に看取ってもらえたら、と希望していると思います」
少しでも命を長らえるためには、気管切開し人工呼吸器をつける選択肢があります。寺嶋医師は、本人や家族と何度も診療方針を話し合いました。 (寺嶋医師)「人工呼吸器につなぐという処置を泰二さんは、延命と考えている。気管切開をするとしゃべれなくなり、ご飯も食べられなくなる、その姿は望んでいないと」