「どれだけお金ないのよ」と驚きの声 トイレ改修できず、“洋式待ち渋滞”が起きる国立大学の限界
魅力と現実ふまえ、進学先選びを
私は1990年に公立の大阪市立大学(現在は大阪府立大学と統合して大阪公立大学)に入学しました。当時の国公立大学の授業料は30万円程度。親からは、「学費を出せるのは国公立だけ。浪人もだめ」と釘を刺されたのを覚えています。 センター試験(当時)が終わってからは、どこの大学にも受からなかった時に備えて、自動車学校に通いながら2次試験の勉強をしていました。宇都宮市の郊外に住んでいたので、通勤するには車が必須だったためです。それでも何とか大学に行きたかった私は、合格可能性が高い国公立大学を探し、深く研究もせずに進学先を決めました。 幸運にも、この選択は「当たり」だったと思います。私が学んだ法学部は1学年200人弱。大人数授業でも100人を超えることは少なく、教室に入りきれないといった問題はありませんでした。3年から始まったゼミの学生数も、2学年合わせて数人から30人程度で、全員がほぼ希望通りに選ぶことができました。発言や発表を求められる機会が多く、授業中は気を抜けませんでした。これまで取材してきた国立大学でも多くは、大人数の授業は少なく抑えられているようです。 このように国立大学の魅力は、学費の安さだけではありません。特に有名私立大と比べると学生の人数が少なく、図書館などの教育環境も充実してきました。また、研究に力を入れる大学が多いため、地方の大学にも、世界と競い合ったり、長期的な視野で基礎研究を深めたりしている教員が大勢います。 そんな日本の「宝」の一つである国立大学がいま、厳しい状況にあります。「国が支えているから安泰」といった一般的なイメージだけで国立大学に進学すると、現実とギャップを感じてしまうことがあるかもしれません。4年間に授業料だけで200万円以上かかる大きな「買い物」です。国立大学の優れた特徴とともに、現状についても十分な情報を集めて正確に把握する。高校生や保護者のみなさんには、しっかり「予習」をしたうえで、満足のいく進学につなげてもらいたいと思います。
朝日新聞Thinkキャンパス