妊娠糖尿病になった女性 健康リスクは? 1日2回、指に針刺し血糖測定「はじかれたような痛み」…発症する人増加とも
晩産化が影響か
妊娠すると、胎盤から「ヒト胎盤性ラクトーゲン」というホルモンが分泌され、血糖値が下がりにくくなる。あいりさんの主治医で、わかばファミリークリニック(千葉市)院長の水谷佳敬さんによると、妊婦が(1)35歳以上(2)肥満(3)家族が糖尿病(4)4000グラム以上の子どもを産んだことがある――などの場合、妊娠糖尿病になりやすい。 妊娠糖尿病になる妊婦は約12%という報告もある。水谷さんは、「2010年に診断基準が厳しくなったことや晩産化によって、診断される人は増える傾向にあります」と指摘する。妊娠する前から糖尿病だった場合は、妊娠糖尿病と区別する。 妊娠中は、血糖値の上昇を緩やかにするため、あいりさんのように麦を白米に混ぜたり、玄米に置き換えたりする。1回に食べる量を減らして回数を5~6回に増やす食べ方もある。 また、ウォーキングなどの運動も、血糖値の上昇を抑えるのに有効だ。水谷さんは「運動する時間は、もともとの運動習慣によっても異なりますが、おなかが張らない程度に1日20~30分取り組めると望ましい」とアドバイスする。それでも数値が下がらなければ、インスリンの注射をする場合もある。
将来、糖尿病になるリスク
妊娠糖尿病になっても、出産後は血糖値が正常に戻ることが多い。ただ、妊娠糖尿病と診断されたことがある人は、将来、糖尿病になるリスクが高まる。水谷さんは「出産後は子育てに追われて自分ことは二の次になりがちですが、できる限り食事に気を配ったり、適度に体を動かしたりして、血糖値が上がりにくい生活を送ってほしいです。お子さんが生まれた月など、定期的に血糖値の検査を受けることも大切です」と呼びかけている。(読売新聞メディア局 利根川昌紀)
みずたに・よしのり
2006年、東邦大学医学部卒。08年、亀田総合病院・亀田ファミリークリニック館山家庭医診療科、外務省巡回医師団・小笠原村診療所などにも従事。12年、国立病院機構長崎医療センター産婦人科、上五島病院など離島医療機関にも従事。16年、地方独立行政法人さんむ医療センター総合診療科・産婦人科医長。22年、医療法人社団マザー・キー ファミール産院理事。23年、わかばファミリークリニック開設。家庭医療専門医・指導医、産婦人科専門医、プライマリ・ケア認定医、日本専門医機構総合診療専門研修特任指導医、東邦大学医学部医学科客員講師。