中谷潤人は日本人王者が占めるバンタム級でも格が違う 強すぎる王者はマービン・ハグラーを彷彿とさせる
【「ちょい打ち」からフィニッシュへ】 第6ラウンド1分30秒、WBCバンタム級チャンピオン、中谷潤人が放った左ショートの打ち下ろしが、挑戦者、ペッチ・ソー・チットパッタナの顔面を捉える。次の刹那、中谷はグラついたタイ人チャレンジャーを仕留めにかかった。 【写真】左の打ち下ろしが顔面をとらえた瞬間も。中谷潤人 圧巻のKOフォトギャラリー ワンツー、右ボディ、左フック、右ボディアッパー、左ショートストレート、右アッパー。すると、2011年のプロデビュー以来、一度もダウン経験のなかった世界ランキング1位はキャンバスに沈んだ。 中谷は一瞬、「これで終ったか」と感じたが、チットパッタナは起き上がる。ファイト再開後、チャンピオンは、とにかく相手を削ることに集中した。 試合終了からおよそ8時間後、中谷は同タイトル2度目の防衛戦を振り返った。 「アゴへのアッパーでチットパッタナの体が上向きになったところで、コーナーから『ワンツーを打て!』という声が聞こえました。それで、何度か繰り返しましたね」 左ストレートで2度目のダウンを奪うと、レフェリーが両腕を交差し試合終了。76勝(53KO)1敗だった挑戦者は、キャリア2つ目の黒星を喫した。 「チットパッタナは、いい選手でした。パンチ力はそこまで感じませんでしたが、運動量も多く、表情が読みづらく、淡々とこなしているような印象でしたね」 第6ラウンド2分59秒で会心の勝利を飾った中谷は、戦績を29戦全勝22KOとした。8月23日から9月24日までのLAキャンプで162ラウンド、帰国後は所属するM.Tジムで、さらに74ラウンドのスパーリングをこなしたが、テーマとしていたのがアゴへのアッパーと、本人が「ちょい打ち」と呼ぶ接近戦における左の打ち下ろしだ。両パンチが試合を決めた。 WBCバンタム級王者は話す。 「試合開始直後は、なるべく相手のパンチが届かないところに頭を置くことを意識しました。(自分の)ジャブがキレていて、当てさせてくれたので距離のコントロールができましたね。初回は左ストレートより右ジャブがヒットしました。『このままなら、いずれストレートも当たるな』と。変化をつけるために、ジャブと同じモーチョンで右フックも打ちました」