音の力で「認知症」に挑む!外出も自由…“管理しない介護”の実態
今回のテーマは、「生きる!認知症と共に」。 厚生労働省などの推計で、認知症の高齢者は、来年には約700万人、約5人に1人になるとされている。さらに65歳以上の高齢者層がピークになる2040年には、46.3%が認知症になる可能性を指摘されている。 番組は、治療が困難とされる認知症に、多様な角度から挑む施設や企業に密着。認知症を特別なものとして扱わず、向き合うためのヒントを探った。 【動画】製薬会社が“家電”!?「認知症」へ新たな挑戦
認知症を特別視しない! 一緒に暮らす先に見えるもの
岩手・花巻市。宮沢賢治のふるさとで知られるこの街に、常識破りの手法で認知症と向き合う介護施設「銀河の里」がある。 普通の施設では、手遊びやゲームなどのプログラムが用意されているが、ここで決められているのは薬と食事の時間ぐらい。囲碁やおしゃべり、寝ている人など、みんなが好き勝手に過ごしている。 入居者は外出も自由で、他の施設なら徘徊と呼ぶ行動も“旅”と称し、スタッフも一緒にとことん付き合う。
元住職だった93歳のおじいちゃんは、「施設で撮りためた写真を自分専用のアルバムに入れたい」と毎日のように訴えるが、スタッフは毎回、初めてのように対応。おじいちゃんにとって、その写真が特別なものと考えてのことだ。 「銀河の里」には、40床の特別養護老人ホームと、通いの人を受け入れるデイサービスがある。デイサービスの利用者は全て認知症だ。グループホームは2棟あり、9人ずつが入居している。平均年齢は86歳。日常生活に介助が必要な要介護3や、寝たきりに近い人もいる。
入居9年目の小原ユキさん(95)は、農家の主婦だった。13人の大家族で、若い頃からとにかく働いたという。 ユキさんは突然立ち上がり、「おしんこを用意しないと…」と言いながら台所へ。話を聞くと、「法事で親戚一同が集まるから、食事の準備をする」とのこと。スタッフは、ユキさんが語る世界に付き合う。
永井千晴さん(23)は、「銀河の里」に入社したばかりの新人スタッフ。大学で文学を専攻していた永井さんは、宮沢賢治を研究している時に「銀河の里」の存在を知り、心惹かれたという。 「障害があるとか病気になるのは、その人の力ではどうしようもない。それでできることが狭められる、会う人やチャンスが限られてしまう現実があるなと思って…。ここは認知症だからという枠組みがなく、“個人対個人”で関われる」。 「銀河の里」のスタッフは、認知症の人たちのそばに寄り添い、話に耳を傾け、その言葉の意味をかみしめて書き留める。永井さんはこうしたやり方に共感し、就職を希望した。