音の力で「認知症」に挑む!外出も自由…“管理しない介護”の実態
「銀河の里」をつくったのは、20代の頃、東京で介護の仕事に就き、管理するやり方に疑問を感じた理事長の宮澤健さん。 「認知症を扱っているとは思っていない。認知症の人たちが700万人も出てくることには何か意味がある。人間を失うなよ、人間としてちゃんと生きられるということを伝えてくれる存在に思える」と話す。
「銀河の里」は耕作放棄地を借りて米作りをしており、田植えや稲刈りなどには、参加希望の入居者も連れていく。農家に嫁いだユキさんは、「もっと近くで見たい」と、永井さんの手を引っ張った。 作業に参加した宮澤さんは、「暮らしの中に一緒にいる。仕事ではない。“見る、見られる”とか“世話をする、される”という関係から脱却したいし、できる」と断言する。 管理を否定し、入居者の赴くままの言動を受け入れながら一緒に暮らす…。宮澤さんは、このやり方を四半世紀にわたって続けてきた。
秋が深まる頃、永井さんは、3カ月前に入居した元金融マンの男性が気になり始めた。ここの生活になじめないのか、毎日逃げ出すことを考えているのだ。男性自身も、前に進めない自分をもどかしく感じているようだった。 他の利用者と関わりを持とうとせず、一人の世界をつくる男性に、永井さんは「(ここに)いてほしい」と辛抱強く話しかける。果たして男性は、永井さんに心を開いてくれるのか……。
製薬会社が“家電”!?「認知症」へ新たな挑戦
一方、思いもよらない方法で、認知症に挑む企業も。 市営団地に住む秋山雅代さん(78)は、4カ月前に軽度認知障害と診断された。秋山さんは、娘の千鶴さんが嫁ぎ、一人暮らしを始めて11年になる。千鶴さんは近所に住んでおり、2人はよく行き来しているが、「差し入れをしても、タッパーを捨てる時があった。母はきれい好きだが、部屋も散らかるようになった」と千鶴さん。秋山さんは症状を自覚するにつれ、ふさぎ込む日が多くなっていった。
そんな中、「シオノギヘルスケア」からスピーカー「kikippa(キキッパ)」(本体価:4万9500円)が発売された。コンセプトは「音で、認知症に挑め」で、微妙に音が震えて聞こえるのは、元の音に40ヘルツの音を掛け合わせているから。