「ガンダム」の宇宙生活を現実に 大学や企業が、地球を救うための挑戦を
地球でも役立つ、宇宙関連技術
こうした技術の開発は、宇宙だけでなく、地球上の私たちの暮らしにも応用できるものだと木村教授は強調します。たとえば映像の投影による空間の拡張や、閉鎖された空間内で空気を最適な状態に保つ技術は、コロナ禍の「巣ごもり」のような状況でも必要とされるものです。閉鎖的なオフィス空間や高齢者施設などでストレスなく過ごすためにも、応用が期待されるでしょう。 「TEAM SPACE LIFEプロジェクト」の一環として研究されている水や酸素などの限られた資源を循環させて再利用する技術なども、現在直面している地球環境問題の解決に役立ちます。 宇宙でも地球でも役に立つ技術を、多くの知恵を集めて共創できるGOIの魅力を、木村教授はこう語ります。 「たとえば環境センサーの研究には、空調設備の専門技術を持つ民間企業の高砂熱学工業にも参加してもらっています。異なる分野の専門家が協力することで、これまでにない発想が生まれやすくなります。また、科学技術を進めるうえで非常に重要なのが、どれだけの人がその技術に共感してくれるかという訴求力です。ガンダムというシンボルによって多くの人が『宇宙での暮らし』をイメージでき、そこに向けて頑張るモチベーションが生まれるのですから、大変有意義な取り組みだと感じています」
あらゆる分野が宇宙研究につながる
これから大学に進む若者たちが、宇宙関連の研究に関わっていく方法はあるのでしょうか。木村教授は「宇宙関連の分野を意識しすぎる必要はありません」と強調します。 「10~20年先には宇宙は特殊な環境ではなくなり、建築から薬学など、衣食住のあらゆる分野で宇宙への応用が必要になってくるでしょう。若い世代の皆さんがそれぞれ興味のあるジャンルで専門性を身につけたうえで、将来的に宇宙関係の研究にも関わることで、新しい発想が生まれてくるはずです」 東京理科大学では、将来の宇宙利用産業をリードする人材の育成にも力を入れています。2015年度から文部科学省の支援を受け、宇宙分野での人材育成プログラム「宇宙教育プログラム」を推進してきました。今年度は新たに「令和6年度宇宙航空科学技術推進委託費 宇宙航空専門人材育成プログラム」に申請し、提案課題「宇宙志向ビジネスを先導する人材を育てるBootcamp in 大分」が採択され、第4期(2024~2026年度)の宇宙教育プログラムを開始しました。全国から集まった高校生と大分県立国東高校の生徒たちが合宿を通じて、新たなミッションを開拓する力を身につけています。 例えば、飛行機の中で無重力を体験する「パラボリックフライト実験」では、実験内容の立案から実験装置の開発、結果の発表まですべて学生のチームで行っています。 木村教授はGOIについて、「さまざまなパートナーと連携する形ができつつあるので、この枠組みで現在の研究内容をさらに発展させていきたい」と意気込んでいます。 木村教授の言うように、宇宙開発はもはや、宇宙関連の研究をしてきた人だけのものではありません。あらゆる分野の人々が、こうした宇宙に関する取り組みに参加する機会が今後も増えていきそうです。幅広い研究が広がることで、「機動戦士ガンダム」で描かれた「宇宙世紀」が、リアルな世界になっていくのでしょう。
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