スポーツが大学を救う? 五輪競技がもたらす経営効果とは
2020年の東京五輪開催が決定し、五輪競技にはこれまで以上に注目が集まっています。活動の場を提供する1つである大学においても、五輪競技との関わり方で、学校運営にもさまざまな影響があるそうです。かつては、女子柔道部を作って谷亮子(旧姓:田村)選手を獲得した帝京大学などは有名ではないでしょうか。所属する選手の活躍によって、知名度を上げ、受験者数を増やすなどは、戦略としてありそうですが、それだけではないそうです。教育機関の戦略などに詳しい三菱UFJリサーチ&コンサルの山村一夫氏に話を聞きました。 ――大学が五輪出場を目指す選手を入学させる事例は、過去にどういった例がありますか? 「有名な例でいうと、1990年代ですが、谷亮子さんが帝京大学に入学しました。当時、帝京大学には女子柔道部がなかったのですが、帝京大学は受け入れる為に、道場や女子寮などを作っています。関西大学では、フィギュアスケートの高橋大輔選手や織田信成選手などが入学しています」 ――大物選手を受け入れるための投資は必要? 「帝京大学は女子柔道部がなかったため、1億円かけて道場を改修し、3億円をかけて女子寮を作るなどの先行投資をしています。関西大学の場合、8億円かけてスケートリンクを建設しています。ただ、関西大学の場合は、それ以前にスケート部が使っていた大阪府高槻市内の民間のスケートリンクが閉鎖することになったため、地域貢献の意味も込めて大学がスケート場を建設することになったそうです」 ――そういった選手を入学させることで、どういう効果がありましたか? 「帝京大学は、大学名のメディアへの露出、という意味では効果的でした。アトランタ五輪に出場した際には、『帝京大学』という文字がメディアに多く登場しています。ただ、瞬間的ではなく、継続的に効果はあったと考えられます。前回のロンドン五輪で金メダリスト・松本薫選手も帝京大学出身だったように、現在においても女子柔道部を強豪として維持しています。谷選手の入学を起爆剤として、女子柔道界に入っていくことに成功したと言えるでしょう。男子柔道に比べて、序列が少なかった女子柔道では、五輪代表を擁することでその中に入り、継続することができたと言えます。男子柔道では、既存での強豪が多く、時間がかかったかもしれません。また、女子柔道で成功したことで、『帝京大学は女子柔道でしっかり学生への対応をしているので、他の競技でも任せられる』と柔道以外の競技でもスポーツ選手の獲得に効果があったと言います」