スポーツが大学を救う? 五輪競技がもたらす経営効果とは
――関西大学の場合はどうでしょう? 「関西大学の場合、『同じ大学の仲間や後輩が五輪などで活躍することで他の学生、卒業生に愛校心が芽生える効果があった』と学長が話されていました。OBとの関係を強化していきたい大学側としては、学生が五輪に出場することで、在校生、卒業生が大学に対しての意識を高め、大学自体を応援してもらえるようになるようです。OBなどからの寄付金などは直接的ですが、例えば、子どもにも母校へ入学させたり、就職の世話をしてもらったりするなど、大学にとってさまざまなメリットがあります」 ――どういう競技の選手を受け入れることが大学として効果的な戦略につながるのでしょう? 「女子柔道にしても、フィギュアスケートにしても、どちらかというと、メジャーではない競技になります。そういったところで選手をサポートする環境を提供したのが良かったのではと思います。また、選手としてピークが訪れる時期に、大学時代が含まれる、というのも大きな意味があります。サッカーの場合、U-23が五輪に出場しますが主力選手はJリーガーがほとんど。五輪競技からは外れましたが、野球なども大学生が日本代表に入るのは難しいです。そういう競技ではなく、大学生が主力になれる競技であれば大学の経営に良い効果をもらたしてくれるでしょう」 ――リオ五輪からは、ゴルフ、ラグビー(7人制)が採用されます。そういった競技に注力することで効果を得ることへの期待できますか?関西の追手門学院大学は、男子ラグビーの元日本代表選手をコーチに招いて強化を進めています。 「男子ラグビーは、社会人選手が中心になって活躍していますが、女子の場合、まだまだ選手人口は少ないでしょう。そういう意味では、しっかりと練習できる環境にある大学生が日本代表に選ばれることも十分に考えられます。2年後のリオ五輪だけでなく、2020年東京五輪では、多くの代表選手を輩出しているかもしれません。そういう意味では、今から強化していくのは大学経営として1つの方法と考えられるでしょう」 大学志望者数が入学定員を割る全入時代に突入し、各大学は生き残りのためのさまざまな戦略を実行しています。そんな中で、学生スポーツに対するサポートは戦略の大きな柱になると言えるでしょう。 == 山村一夫(やまむら・かずお) 三菱UFJリサーチ&コンサルティング 革新支援部 シニアコンサルタント 学校法人の戦略策定・実行支援を手掛ける。「中長期経営戦略立案の支援(大学・高校・中学)」「新学部・新学科設置検討時の市場調査・実現可能性の検証(大学)」「新コース制導入時の検討支援(中高)」「広報戦略の立案・実行支援(中学・高校・大学)」等のプロジェクト実績多数。「大学世界ランキング」の動向に明るい。