「早く終わってほしい」17歳の時、暗闇のなかで「実の父親」から受けた”おぞましい行為”と、すべてを知る母親から届いた「許しがたいLINE」
情緒が不安定に…
検診には毎回母親が付き添い、妊娠6ヵ月目、胎児が男児であることが判明すると泣いて喜んだというが、一方で麻耶さんは情緒不安定な状態に陥っていたという。 「悪阻のようなものがなく、妊娠した実感が湧かなかった初期の頃に比べ、安定期に入って胎動を感じるようになったあたりから、『無事に生まれて来るのだろうか』という不安にかられました。それ以上に『本当に産んで良いのだろうか?』という思いもありました」 妊娠中は精神的に不安定になることが多いというが、麻耶さんのように「特殊な事情」を抱えていれば、なおさらだろう。 「でも、いまさら不安がってもどうしようもなかった。だから、途中からややこしいことを考えるのは止めました。自分たちの都合で勝手につくっておいて私が不安がっていては、これから産まれてくる赤ちゃんが可哀想と思うようになったんです。この子に罪はないのだから、しっかり産んであげようって覚悟を決めました」 インタビュー中、麻耶さんは「いまさら嫌がる」「いまさら不安になる」などと、「いまさら」という言葉を何度も口にした。そこに、彼女の「逡巡」が滲み出ているように筆者は感じた。 ちなみに家を出て以来、麻耶さんは祖父母とも父親とも会っていない。連絡もとっていない。理由を聞くと、こう答えた。 「私から連絡する気にはなれなかったし、向こうからもなかったので、結果的にそういうことになりました」
授乳を拒否して…
そして麻耶さんは男児を出産した。帝王切開だった。 「『分娩中に万が一のことがあったら怖い』という理由で、母が決めました。私も父の子どもを経腟分娩することに抵抗があったので賛成でした」 生まれたばかりの赤ん坊を見ても、麻耶さんには何の感情も湧かなかったという。入院中、感無量という面持ちで赤ん坊を抱きあげ、頬ずりする母親の姿を見ても、他人事のように感じていたという。 「代理母になったような感覚でした。私がお腹を貸して『母が欲しがっていた父の子どもを産んだ』みたいな感じですかね。妊娠中もそうでしたが、赤ちゃんに対して母性的なものを感じることはなかったと思います」 それゆえ出産後に一度初乳をあげたものの、その後麻耶さんは赤ん坊への授乳を拒否している。 「母には『(自分が育てるわけじゃないから)情が移るのが嫌だった』と説明しましたが、本音は赤ちゃんに乳首を吸われるのがイヤだったからです。ひどい母親だと思われるかもしれませんが、私にとって、それくらい生まれて来た赤ちゃんはおぞましい存在になりつつあったんです」