角田裕毅が「現実的に不可能」な1ストップ作戦で9位 現実を可能にしたチームスタッフとの強い絆
【夜を徹して新たにマシンを組み上げた】 チームはテレメトリーという通信装置でタイヤ各部の温度やスリップ量をリアルタイムで確認し、GPSデータからライバルのペースや車速を見て、相手がどれだけプッシュしているかも監視しながら、どんなレベルでタイヤをいたわるのがベストなのかを角田にアドバイスしてくれる。 それを参考にしつつ、最後は角田自身が自分の感覚を踏まえて、ドライビングをアジャストしていく。 「裕毅、厳しいのはわかっているが、僕らを信じてくれ。最後にはうまくいくから」 ハードタイヤを40周保たせることもさることながら、実際には第1スティントのミディアムを29周も保たせたことのほうが大きかった。タイヤのグリップが低下してきてもなお、なんとかそれを維持して耐え抜いた。 まさに、チーム全体で可能にした1ストップ作戦だった。 その背景には、予選の大きなクラッシュもあった。 高速のターン5で縁石外の芝生にタイヤを落とし、濡れた芝生でスライド。縁石と芝生の間にあった段差でマシンが底突きをしてコントロールを失い、最後は芝生からコースへ戻る段差でマシンが跳ね、宙に浮いたまま200km/hでバリアに激突した。 段差を把握しておらず、芝生を使っても大丈夫だろうと甘く見た角田自身のミスに加えて、FIAのコース安全管理の問題もあった。その結果、マシンは大破してモノコック交換が必要となり、RBのメカニックたちは夜を徹して新たに1台のマシンを組み上げることになった。 今年からパルクフェルメ内で土日のモノコック交換が可能となり、交換してもピットレーンスタートにならなくなったのが幸運だった。壊れたマシンをパルクフェルメ下に置いておき、背後ではスペアモノコックを使ってサスペンション、パワーユニット、ギアボックス、ボディワークと組みつけて、新たな1台を作り上げていく。 夜の間にその作業を完了させて、日曜朝10時の本来の作業開始時刻になるとFIA技術委員立ち会いのもとで壊れたマシンから引き継げるものは引き継ぎ、マシンのセットアップを完璧に同じ状態へと仕上げていった。その作業はグリッドへと出て行く20分ほど前まで慌ただしく続けられたが、夜の間にマシンの組み立てを行なっておけたからこそ、組みつけやセットアップの精度を極めて高く仕上げることができた。