角田裕毅が「現実的に不可能」な1ストップ作戦で9位 現実を可能にしたチームスタッフとの強い絆
「イエス! P9! イエス! よくやった!」 F1第13戦ハンガリーGP決勝のフィニッシュラインを9位で越え、レースエンジニアのマッティア・スピニの声が聞こえてくると、角田裕毅は声にならない雄叫びで喜びを爆発させた。 【写真】F1ウィリアムズ育成ドライバー・松井沙麗(13歳)インタビューカット集 「XXX!XXX!XXX!みんなありがとう、みんながクルマをリペアしてくれたおかげだ!」 70周のレースを1ストップ作戦で走りきった角田が「タフだったけど、いいレースだった」と振り返ると、スピニはこう返した。 「Goodじゃない、Exceptionalだ。驚異的なレースだったよ」 暑くてタイヤに厳しいハンガロリンクでは、誰もが2ストップ作戦を採った。 1ストップで走りきるには、相当なタイヤマネジメントが必要で、タイヤをオーバーヒートさせないよう極めて丁寧なドライビングと、それでいてタイムロスを最小限に抑える絶妙なバランスが求められる。いや、現実的にはそれは不可能だと考えられていたからだ。 角田も最初は、2ストップ作戦で行くつもりだった。 チームから「プランCで行くぞ」と1ストップ作戦への切り替えが伝えられたのは24周目で、その時は角田自身も半信半疑だった。29周目にピットインしてハードタイヤに履き替えてからもなお、残り40周を走りきれるとは思っていなかったという。 「正直に言うと、僕はセーフティカーを待っているだけだと思っていたんです。ハードタイヤに交換してからもまだ、1ストップで走りきるとは信じられないくらい、レース前の戦略ミーティングでは1ストップ作戦はあまり考慮に入れていませんでしたから。 実際、すべてがギリギリでしたし、走っていてマシンのフィーリングはそんなによくはなかった。でも、ペースが周りよりもいいと聞いて、すごく驚きました」 エンジニアのスピニからは、高速コーナーでどのくらいタイヤをいたわった走りをすべきか、タイヤの状況とペースを見ながら徐々にプッシュレベルを上げていくためのアドバイスが頻繁に与えられた。