考え抜いて決めた「胸の切除手術」という選択 20歳の東大生が語る、トランスジェンダー男性として選んだ“生き方” #令和の子
榎本春音(はるね)さんは、東京大学に通う20歳の学生だ。トランスジェンダー男性である彼はこの秋、乳房を切除する手術を受けた。「苦しんで手術を受けたわけではない、自分でつかみ取ったこと」と話す彼が、手術を通して感じたことを語ってくれた。 (TBSテレビ デジタル編集部・古瀬真理奈) 【写真で見る】手術後、病室での榎本さん
「違和感や怖さは、自分がおかしいから…」体の変化に戸惑った中学時代
榎本さんに初めて話を聞いたのは、手術の2日前だった。体にメスを入れる…。そんな大事な手術の直前に、込み入った話を聞くので申し訳ない気持ちになっていた筆者に、榎本さんは落ち着いた様子で心境を教えてくれた。 「手術を目前に控えてみると、胸が平らになった自分を考えて晴れやかな気持ちになるような想像があります。一方で、初手術かつ初の全身麻酔なので手術台に上がることは怖いですね」 本来は、ピアスの穴を開けるのも怖かったという榎本さん。そんな彼が手術に挑むことにしたのは、胸が「いろんなことのきっかけだった」からだという。 榎本さんは2004年、女性の体に生まれた。意外にも、幼いころは抵抗感を抱くこともなく生活していたという。「いつかは男性器が生えてくる」と体の変化を信じて待ち望んでいたのだ。 ところが、小学4年生くらいから二次性徴が始まり、胸が膨らみ始めると「自分はおかしい」と思い始めた。 「自分は女性だって周りに言われるけれど、体の成長にショックを受けている。だから違和感や怖さ、気持ち悪さみたいなものは、全部“自分がおかしいから”だと思ってしまった」 中学時代は、周りを真似して何とか女性を演じ切ろうとした。苦しくなることはありながらも、自分自身を納得させるしかなかった。
「自分はトランスジェンダーなのではないか」。榎本さんがそう気づいたのは、中学3年生のときだった。 「自転車にのっていたときに胸が風に吹かれて、自分で胸の存在を感じられたときにすごくギョッとしてしまって。そこから一気に、何とか胸を平らにしたい、そうしないと頭がおかしくなるという気持ちになったんです」 ネットで「胸を平らにする方法」と調べると、胸をつぶすための「ナベシャツ」を発見。そこで初めて「トランスジェンダー」の存在を知った榎本さんは、自身の性と向き合い始めた。