「おじさんの聖地だったのに…」「カフェじゃないんだから」との声も。吉野家の「おしゃれ化」に抱く“モヤモヤ”の正体とは?
牛丼業界は全体として、店舗数が天井に達しつつあり、さらなる拡大を図るために顧客の拡大が必要とされていた。そうした中で、これまで牛丼屋が取りこぼしていたターゲット層を狙っていこうとしているわけだ。 特にファミリー層については、1人客に比べれば必然的にその消費額も大きくなるから、店側にとっても都合がいい。 吉野家では「1人で行く安くて早い店」からの脱却が進んでいるのだ。 ■松屋でも似たような変化が こうした変化は、他の牛丼チェーンでも起こっている。
例えば、松屋。松屋は「みんなの食卓でありたい。」のスローガンのもと、もともと牛丼だけに頼らないメニュー構造をしていたが、近年、牛丼以外のメニューの進出にさらに意欲的になっている。 数年前からはとんかつの専門業態である「松のや」の出店を加速。また、カレー専門店である「マイカリー食堂」も誕生させて、この3店舗を複合させた併設店を多く出店している。 これによって、コア層の30~40代男性に加え、ファミリー層も増えたらしい。やはり、客層の拡大がその一つの狙いにあることは間違いなさそうだ。
ちなみに、その店内は複数の飲食店が軒を連ねる「フードコート」のようであり、ファミリーでやってきても、それぞれがそれぞれ食べたいものを食べられるからいい。 現在、「なんでもある」業態のファミリーレストランの数がじわじわと減少し、その代わりに「カテゴリーキラー」と呼ばれる専門店が増えている。フードコートはそのような時代において、ファミレスの「なんでもある」感と専門店の強みを融合させたような業態だ。ファミリーにバッチリかもしれない。
さらに、松屋は客単価を上げる戦略も取りつつある。特に最近は1000円を超えるメニューも誕生している。例えば、11月から発売されている煮込みビーフシチュー定食は1190円。12月から発売されているカットヒレステーキ丼は1180円である。牛丼屋のイメージで行くと、少し高く感じるだろう。 「1人で安く行ける店からの脱却」という、吉野家と同じ変化が起こってきている。これまでのロイヤルカスタマーであった「ソロ男性」には少々悲しい変化かもしれない。