「おじさんの聖地だったのに…」「カフェじゃないんだから」との声も。吉野家の「おしゃれ化」に抱く“モヤモヤ”の正体とは?
吉野家の開業は1899年。最初は日本橋の魚市場に誕生した。市場で働く忙しい人々のために、さっと食べられる牛丼を提供し始め、人気を博す。 スローガンは「うまい、やすい、はやい」で、牛丼以外のメニュー数は絞り、ソロ男性向けに牛丼を安く、早く食べられることに注力してきた。 こうした店の方向は、その空間にも表れている。従来の吉野家は、なるべくご飯を早く食べたいサラリーマンに特化した空間を作っている。ズラリと並んだカウンター席、インテリアも少なめの簡素な店内など、「1人で黙々と食事をする空間」だ。
しかし、現在展開中の「クッキング&コンフォート」業態はそうではない。「女性やファミリーがゆったり居られる空間」になっている。 ■クッキング&コンフォート店舗はどんな感じ? 実際に中に入ってみよう。 まず気づくのは、その雰囲気の明るさだ。モノトーンを基調とした店内は明るく、洋楽が流れていて、まるでおしゃれなカフェに来たかのよう。 また、所々に植栽が施してあって、モノトーンの店内に彩りを添える。造花だが、植物がある。注文はカウンター越しではなく、中央のレジで行い、料理もそこで受け取る。今までの吉野家とは少し違うスタイルだが、決してわかりにくくはない。
席は、テーブルと1人席が混在しているが、若干、テーブルのほうが多い。私が訪れた店舗には、キッズスペースやキッズ向けのカプセルトイなども置いてあって、「ようこそ、ファミリーさま!」感がすごい。 また、各テーブルにはコンセントがあって、カフェとしてゆったり使える設計も。ちなみにこの店舗にはドリンクバーもあるから、作業にもバッチリだ(この記事も、吉野家で書いている)。 総じて、女性やファミリー層をかなり意識した店内なのだが、吉野家がこのような店舗を作ったのは、これまでの牛丼の客層だったソロ男性だけでは、店舗の拡大に限界が見えてきたからだろう。