県勢2校の熱戦振り返る /和歌山
<センバツ2019> 第91回選抜高校野球大会(毎日新聞社、日本高野連主催)で、そろってベスト8に進んだ市和歌山と智弁和歌山は3月31日の準々決勝でともに敗れ、春に幕を閉じた。しかし、県勢はセンバツ通算100勝を達成、智弁和歌山は平成のチーム別センバツ最多勝(27勝)を決め、記録ずくめの大会となった。全力を尽くした両チームの熱戦を振り返った。 ◇智弁和歌山 新監督、今後に道筋 智弁和歌山は、甲子園初采配(さいはい)となった中谷仁監督が2勝を挙げ、高嶋仁名誉監督から託されたチームを軌道に乗せる戦いを見せた。 熊本西に13-2と快勝して臨んだ2回戦の啓新(福井)戦は約2時間の降雨中断を挟む難しい試合となった。主将時代の全国制覇を含めて経験豊富な中谷監督が「いったんスイッチを切ろう」とアドバイス。先発した池田陽佑(ようすけ)投手もメンタルをうまくコントロールし、緩急を付けた投球で連打を許さず、5-2と完投勝利した。 準々決勝の明石商(兵庫)戦では2番手として三回から登板した小林樹斗(たつと)投手が140キロを超える速球で相手を苦しめた。中谷監督から元々「潜在能力が一番高い」と評価されており、投手間の競争は激しくなりそうだ。 攻撃は得点圏に走者を進めながら加点できない場面が相次ぎ、3試合で計34残塁を記録した。特に黒川史陽(ふみや)主将、東妻純平捕手の両主軸は決定力に欠き、今後に課題を残した。 「志半ば」と言い残して甲子園を後にした中谷監督がどのようなチーム作りをするのか、挑戦は始まったばかりだ。【砂押健太】 ◇市和歌山 初戦突破で選手躍動 開幕試合で呉(広島)に競り勝った市和歌山の選手たちは2回戦以降、躍動感あふれるプレーで、52年ぶりの8強入りを果たした。 「緊張した」(山田佳吾選手)などと開幕試合独特の雰囲気を語っていた選手たち。重圧のかかる初戦を突破したことで、2回戦・高松商(香川)戦では硬さもとれ、動きは確実に良くなっていた。緒方隆之介選手の本塁打や、壱岐有翔(ありと)選手の2点二塁適時打など長打も生まれ、かつてないほど好調な打撃を見せた。米田航輝主将自身、「初戦とは別のチームじゃないかと思うぐらい良かった」と驚き交じりに話した。 しかし、習志野(千葉)との準々決勝では二回から代わった相手エースにうまく対応できず10三振を喫した。好投手をどのように攻略していくのか、更なるレベルアップは欠かせない。 半田真一監督は「8強はチームの自信になったが、満足していない」と気を引き締める。「打撃で核となる選手がいなかった」とし、これまでの「堅実野球」を大切にしつつ攻撃力も高めていく考えだ。【後藤奈緒】 ……………………………………………………………………………………………………… ◇今大会で達成された主な記録 ■県勢センバツ通算100勝 =市和歌山が1回戦(呉)で達成 ■平成のチーム別センバツ最多勝(27勝) ■平成のチーム別甲子園春夏通算勝利数1位タイ(63勝) =ともに智弁和歌山が2回戦(啓新)で達成 ■81年ぶり県勢ダブル8強 =市和歌山と智弁和歌山が達成。1938年は海南中(現海南)と海草中(現向陽)によるダブル8強