視聴率低迷の紅白歌合戦 どう生き残るのか
潮目の変わったバブル以降 紅白の迷走始まる
70年代の終盤から80年代にかけての日本は経済発展の結果物質的にはある程度満たされたため、人々の関心は徐々に心の豊かさやゆとりある生活を求める方向へシフトしていく。 この80年代には日本はバブルへと向かっていくが、テレビは一家に一台というより一人に一台でも驚かれない時代となり、娯楽の好みも大みそかの過ごし方も“個人化”が進んだ。大みそかに家族みんながテレビを前に勢揃いして料理をつつきながら一年の思いを語らい同じ番組を観る、という「絵」はまさに絵に描いた餅になっていった。好景気と反比例するかのように日本レコード大賞への関心は低下、歩調を合わせるように紅白も次第に迷走を始める。 昭和から平成へと移り変わった90年代には年末の賞レースから紅白へという流れは求心力を失い、逆に賞レースや権威的なものを意識せずに音楽活動をするアーティストがどんどん増えていった。ミュージシャン系のアーティストは紅白に出場するより辞退するほうがイメージに合っている、という時代に突入した。“歌謡曲”は若い世代の間では半ば死語となりJ-POPが取って代わる。この頃からすでに昭和感覚での歌合戦は時代に合わなくなっていた感は否めない。
これからの紅白 どう生き残っていくか
紅白も手をこまねいていたわけではなく、海外のアーティストを中継で参加させるなどその時々でさまざまな手は打ってきた。今回は若者寄りにシフトしたというが視聴率の低迷を打開するには至らなかったようだ。 1963(昭和38)年の第14回では平均視聴率81.4%をマークし8000万人が観たと言われるほど隆盛を極めた紅白も、今は昔。看板が大きいだけに変革も難しいのだろう。しかしそれでも、ネットの配信など視聴スタイルが多様化する中でなお30%を越える視聴率をマークするのだからまだまだ「関心度の低い番組」というわけでもない。今後どのような工夫が見られるか。紅白がどう生き残っていくのか見守りたい。 (文・志和浩司)